2013 Fiscal Year Annual Research Report
光学顕微鏡技術を駆使した単一シリアの動きと力の高精度測定
Publicly Offered Research
Project Area | Cilium-centrosome system regulating biosignal flows |
Project/Area Number |
25113524
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
政池 知子 東京理科大学, 理工学部, 講師 (60406882)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | シリア / 繊毛運動 / 3次元トラッキング / 光ピンセット |
Research Abstract |
本研究の目的は、マウス気管繊毛の3次元的な運動を高時間分解能・高空間分解能で追跡する事である。また、この3次元トラッキングの手法を光ピンセットと組み合わせることで単一シリアの力学応答を精密測定し、非対称なシリアの運動が流れを生み出す機構に迫ることである。 今年度はまず、単一シリアを光ピンセットで捕捉している間の振る舞いについて観察と解析を行った。その結果、捕捉中もシリアは鞭打ち運動の周波数を変えないことがわかった。また、シリアの捕捉位置を変え、有効打と回復打のそれぞれのフェーズでの捕捉力を測定した。その結果、有効打開始の直前の位置での補足力が最大になることがわかった。また、鞭打ち運動をしていない繊毛を光ピンセットで引っ張り、繊毛が変形するときのバネ定数も測定した。これらの実験により、繊毛が変形するときの力と内部の分子モーター由来の力の両方が鞭打ち運動に寄与し、弓を引いて矢をとばすようなメカニズム鞭打ち運動が起こっている可能性が示唆された。 次に、単一シリアの鞭打ち運動観察をカルシウムイオン存在下で行い、その濃度依存性について調べた。その結果、振幅、鞭打ち速度、回転方向にカルシウムイオン濃度が影響する可能性が示唆されたが、周波数は一定であった。カルシウムイオン濃度依存性は単調な変化ではなく、低濃度と高濃度が定性的には同様の性質を示すため、今後モデルの検討が必要になると考えられる。 このように、光ピンセットによる捕捉とカルシウムイオン濃度依存性の実験により、鞭打ち運動の周波数の堅牢性が浮き彫りになってきた。この性質は、異物がシリアに載った場合も周囲のシリアと同調して運動できることを意味し、異物の体外に排出するメカニズムに直結している可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は光ピンセットによるシリアの捕捉の実験を通じて気管からの異物排出のメカニズムを明らかにするのが目的である。本年度は、光ピンセットによる補足力の測定において、まず補足位置依存性をあきらかにし、次に鞭打ち運動をしていないシリアの変形による力をも測定することができた。また、光学系も大幅に改良し、シリア本体のDIC像と3次元位置検出顕微鏡の像を同時観察することもできるようになった。更に、当初の計画にはなかった運動のカルシウムイオン濃度依存性までも測定することができたため、当初の計画より進展がはやいと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
単一シリアをガラス表面に固定し、鞭打ち中の各状態において3次元光ピンセットで捕捉して応答を観察、測定する。この実験により、シリアがどのように力を発生するのかをモデル化することができるはずである。とくに、本年度は応答にかかわらず一定の力をかけ続けるとシリアがどのような振る舞いをするのかを明らかにする予定である。更に、ATP濃度などの溶液条件を変えて最大捕捉力の測定や運動の軌跡の定量を行う。一方、他の繊毛や鞭毛にみられる鞭打ち運動の波形のカルシウムイオン濃度依存性がマウス気管繊毛にみられるかどうかを3次元で定量的に明らかにする。野生型においてこれらの実験系を確立する間に、繊毛のポリグルタミン酸修飾が行われなくなったノックアウトマウスを飼育して定常的に実験に使用することができるような環境を整え、鞭打ち運動が対称的になるときの運動様式と力学応答を3次元的に定量化する。
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[Presentation] 回転軸をねじったF1-ATPase変異体の回転特性解析2013
Author(s)
下澤東吾1, 橋本優1, 井合健太郎2, 宗行英朗3, 政池知子4, 西坂崇之1(1学習院大学,2東京工業大学,3中央大学,4東京理科大学)
Organizer
日本生体エネルギー研究会第39回討論会
Place of Presentation
静岡県コンベンションアーツセンターグランシップ
Year and Date
20131218-20131220
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