2013 Fiscal Year Annual Research Report
受精と妊娠の蛍光生体イメージング
Publicly Offered Research
Project Area | Mutli-dimensional fluorescence live imaging of cellular function and molecular activity |
Project/Area Number |
25113714
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
佐藤 裕公 大阪大学, 微生物病研究所, 助教 (40545571)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ライブイメージング / 受精 / 遺伝子組換え動物 |
Research Abstract |
哺乳類の受精や着床は母体内で起こる。そのため、今でもそこで起こっていることは断片的にしか知られておらず、ここまでの研究は“いかにして受精卵(胚)を得るか”などの試験管内で再現できる課題に偏ってきた。しかし、現在、先進諸国を中心に母体高齢化などの問題と相まって母体内で起こっていることの知見が急速に求められている。本研究では、遺伝子組み換え技術とライブイメージング技術を駆使して、これまで見るのが不可能とされてきた母体内での受精と着床・妊娠の様子について蛍光in vivoライブイメージングを用いて明らかにすることを目的にしている。 本研究では、計画全体を(1)受精のin vivo ライブイメージングと(2)着床・妊娠のin vivoライブイメージングとに大別している。このうち、(1)では、蛍光プローブを開発して特に精子の遡上・卵と精子の融合・卵Ca2+振動・多精子受精拒否の成立・卵割開始の5つのイベントを可視化することを目的としている。また、(2)では、レンチウィルスを用いた胎盤特異的な遺伝子導入法などを用いて、妊娠マウス中の胎盤を非侵襲的に経時観察する手法について検討していく。 この中で、本年度は特に(1)の中の卵Ca2+振動と多精子受精拒否の成立について、蛍光プローブの開発と定量的解析の手法に大きな進展があった。また、そのほかの項目についても順調に進行している。ここで得られた結果は、生殖医療への応用のみならず、生物学の発展と応用について重要な知見になることは間違いない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究における主な実験項目は、(1)受精のin vivo ライブイメージングと(2)着床・妊娠のin vivoライブイメージングとに大別できる。そのうち、(1)の中では、不妊の要因として予想される、精子の遡上・卵と精子の融合・卵Ca2+振動(卵の活性化、細胞周期の再開)・多精子受精拒否の成立・卵割開始という5つのイベントに特に注目し、これらを可視化すること、そしてできる限りその結果について定量的に解析を行うことを目的としている。また、(2)では、レンチウィルスを用いた胎盤特異的な遺伝子導入法などを用いて、妊娠マウス中の胎盤を非侵襲的に経時観察する手法について検討していく。 この中で、本年度は特に(1)の中の卵Ca2+振動について、卵へのRNA注入(マイクロインジェクション)法による、非常に侵襲性の低い可視化法を検討し、この結果、卵Ca2+振動に対する受精顆粒の放出などについて、定量的な解析を行うことに成功し、胚の質や多精子受精拒否の成立について新たな事実を明らかにすることができた。また、受精顆粒についてはさらに、主要な構成蛋白質と蛍光蛋白質との融合蛋白質の遺伝子を成熟前の卵子にマイクロインジェクションすることで顆粒形成メカニズムの可視化にも成功している。 そのほか、従来のES細胞を用いた遺伝子ノックアウト法に加えて、新たに申請者らが開発したCRISPR/Cas9プラスミドDNAインジェクション法による遺伝子改変動物作製法(Mashiko et al., Sci. Rep. 2013、および Mashiko et al., Dev. Growth. Differ. 2014)を用いることで、迅速に遺伝子欠損個体および点変異導入体を作製することに成功したため、これを用いて特に初期化における精子側・卵側の重要因子について、それぞれ複数の遺伝子の欠損個体/点変異個体の作製に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
26年度以降は、これまでに得られた知見について積極的に論文として発表していくとともに、作出した遺伝子変異個体に対してこれまでに確立した観察法を適用することで、重要と目される因子、またはその変異箇所が、受精や卵の活性化にどのような働きを持っているのかを明らかにしていく。また、in vivoイメージングの実現のために、これまで用いてきた蛍光プローブの遺伝子を卵または精子中で特異的に発現する遺伝子組換え個体を作出し、ここまでに得られた知見(培養環境中)と生体内での反応の差を見出すことを目的に、具体的には卵Ca2+振動プローブであるCa2+結合蛍光蛋白質の遺伝子を卵特異的発現ベクターに導入して、受精時のCa2+振動を卵管外から観察するなどを目指していく。 そのほか、(1)で掲げた諸現象について、25年度に複数の可視化に成功しているため、これらイベント間の連携について各イベントのプローブを組み合わせ、多次元ライブイメージングの手法を行うことで、継時的な変化を観察する。(2)で挙げた研究についても、遺伝子改変技術をより活用し、特に胎盤関連の因子をターゲットに、浸潤不全や胎児の扶育につながる因子を破壊するなど、イメージングの材料をより積極的に開発していく。
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Research Products
(9 results)
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[Journal Article] Feasibility for a large scale mouse mutagenesis by injecting CRISPR/Cas plasmid into zygotes.2014
Author(s)
Mashiko D., Young S. A., Muto M., Kato H., Nozawa K., Ogawa M., Noda T., Kim Y. J., Satouh Y., Fujihara Y., Ikawa M.
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Journal Title
Development, Growth and Differentiation
Volume: 56(1)
Pages: 122-129
DOI
Peer Reviewed
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