2013 Fiscal Year Annual Research Report
二次細胞壁のパターン形成を支配する空間シグナルの解明
Publicly Offered Research
Project Area | Plant cell wall as information-processing system |
Project/Area Number |
25114507
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小田 祥久 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (30583257)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 二次細胞壁 / 転写因子 / 微小管 / キネシン |
Research Abstract |
陸上植物は体の物理的な支持、水の輸送のために強固な二次細胞壁をもつ木部組織を発達させました。適切な強度や水輸送通路の確立するために、木部道管では組織に応じて螺旋、網目、孔紋などの異なったパターンの二次細胞壁を形成します。本研究では、様々なパターンの二次細胞壁形成における遺伝子の発現プロファイルとタンパク質の機能を比較することにより、二次細胞壁パターンの制御機構の包括的な理解を目指します。昨年度は複数の転写因子を新たにシロイヌナズナ培養細胞に導入し、新規のin vitro木部道管誘導系を確立しました。その結果、異なったパターンの二次細胞壁を人為的に誘導することが可能になりました。また、細胞壁パターンの制御因子の一つであるKinesin-13Aの機能を明らかにしました。このタンパク質の木部細胞における局在と作用を調べた結果、Kinsein-13Aは活性型ROP GTPaseおよび微小管付随タンパク質MIDD1を介して局所的に表層微小管に作用し、表層微小管の脱重合を促進していることが分りました。さらに、生化学的な解析によりKinesin-13AがATP依存的に微小管を脱重合する活性を持っていることが分りました。シロイヌナズナのT-DNA挿入変異体を用いた解析から、Kinesin-13Aが微小管の脱重合を介して壁孔の形成を制御していることが明らかになりました。これらの成果に加え、すでに取得済のマイクロアレイデータを用いて網羅的な局在解析を進めた結果、微小管、アクチン繊維およびROP GTPaseの制御に関わると考えられる複数の細胞壁パターン制御因子の候補を同定しました。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
昨年度は二次細胞壁の合成を誘導する複数のNAC転写因子、MYB転写因子などを用いて新規にin vitroでの木部道管誘導系を確立しました。現在、これらの誘導系を用いたマイクロアレイ解析を進めており、部分的な遺伝子発現プロファイリングをすでに獲得しています。これらの遺伝子発現には明確な差があったことから、この比較解析を進めることにより、二次細胞壁のパターンを制御する因子を同定することができると期待されます。すでにこの中から新規の細胞骨格、ROP GTPaseの制御に関わっていると考えられる候補因子を同定しています。さらに、昨年度は重要な二次細胞壁パターンの制御因子のうちの一つであるKinesin-13Aの機能を明らかにすることに成功しました。このタンパク質はKinesin-13ファミリーに属しており、動物では微小管を脱重合することにより染色体分配をはじめ多様な現象に関わっていることが明らかとなっていますが、植物におけるこのタンパク質ファミリーの機能はほとんど明らかではありませんでした。昨年度の研究により、Kinesin-13Aがin vitroにおいて微小管を脱重合する活性があること、微小管結合タンパク質MIDD1と結合することにより、in vivoにおいて表層微小管を特異的に脱重合すること、ROP GTPaseシグナリングの下流で働き、二次細胞壁の壁孔形成を制御していることを明らかにし、植物基礎研究の最高峰誌であるPlant Cell誌に報告しました。このように、二次細胞壁のパターンに関わる因子の探索が順調に進んでいます。それに加えて、制御因子の機能解析により二次細胞壁のパターンを制御する分子的な仕組みの理解が大きく前進しましており、本研究課題は当初の計画以上に進展しています。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度はNAC転写因子およびMYB転写因子を導入した複数の木部道管の分化誘導系を用いて、遺伝子発現のプロファイリングを完成させるとともに、その詳細な比較解析を行います。特に、壁孔型の二次細胞壁形成と螺旋型の二次細胞壁形成との差に着目し、解析を進めます。この解析から新規の二次細胞壁パターン制御因子を同定し、その機能解析を進めます。それぞれの分化誘導系に特異的な遺伝子をスワップさせることにより、二次細胞壁のパターンを人為的に操作し、二次細胞壁パターンの制御機構を構成的に理解することを目指します。また、これまでに同定した制御因子および新規の制御因子の相互作用因子を酵母two-hybrid法、および免疫沈降・質量分析により探索し、二次細胞壁のパターン形成におけるタンパク質制御ネットワークを明らかにします。最終的にはこの制御ネットワークを計算機シミュレーションに反映させることにより、二次細胞壁パターン形成の包括的な理解を目指します。
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