2013 Fiscal Year Annual Research Report
タイトジャンクションが決める炎症特性とがん
Publicly Offered Research
Project Area | Conversion of tumor-regulation vector to intercept oncogenic spiral accelerated by infection and inflammation |
Project/Area Number |
25114708
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
田村 淳 大阪大学, 生命機能研究科, 准教授 (00362525)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | クローディン18 / タイトジャンクション / プロトン透過 / 胃炎 |
Research Abstract |
炎症とがんの相関は、さまざまながんで示唆されてきた。中でもヒトの胃がんは炎症を下地として生じるがんとして広く知られる。しかし常に、炎症の持続=発がん、ということではない。がんの引き金としての炎症の持続に加え、どういった特性を持つ炎症が持続するか、炎症の特性が重要である可能性を示唆する。 私どもで作製解析してきた胃に発現の多い、上皮細胞タイトジャンクション(TJ)構成蛋白質クローディン(Cldn)18のノックアウト(KO)マウスは、胃の成熟にともなって胃酸分泌が開始する新生3日後から、壁細胞・主細胞の減少をともなう偽幽門腺化生性の胃炎を生じる。マウスはその後、好中球優位の炎症を持続させ、1歳齢では、腸上皮化生様の変化や良性ポリープ状の変化の出現を認める個体が出現する。 一般に、急性炎症が持続すると慢性炎症へと遷移し、好中球優位の急性型の炎症は消退する。しかし、私どものCldn18KOマウスは、1歳の高齢でも、マウスが急性型の胃炎を示し、マクロファージやリンパ球の浸潤を示さない。すなわち、炎症が持続するにもかかわらず、急性炎症が持続し、慢性炎症化しない可能性を示唆する。 本研究では、こうした特徴的な所見を示すCldn18KOマウスを軸に、急性炎症が慢性炎症化することが発がんにどのような重要性と意義を持つかについて、Wnt1-Tgマウスとの2重変異マウス、CagA-Tgマウスの解析を同時に行い相互比較を行いながら、TJとの関わりからの解明を目指している。2重変異マウスでは、高度なマクロファージの浸潤等を認めたが、がん化への進展は認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度:急性炎症(活動性胃炎)を持続させ、慢性化しない機序の解明; クローディン18ノックアウトマウスの胃で見られる現象の中でも、急性炎症状態が持続しても、慢性炎症に推移しにくい現象は、炎症の制御(治療)の観点からも重要な現象の1つである。いくつかの原因が推察されるが、こうした推察の正否を見極めるためには、経時的な観察と定量性を含む実験が必要である。 これまでにIL-1β、COX2 mRNA、IL-6など関連が予想される遺伝子のいくつかの発現について、リアルタイムPCRや組織蛋白質レベルでの解析を行っているが、慢性炎症のマーカーの数値上昇はほぼ見られない。一方、炎症進展について、炎症担当細胞レベルでの解析が現状では不十分であるが、炎症の広がりや炎症担当/免疫細胞間のシグナルの相互作用を時間空間的に追跡することが重要である。 そこで、はじめに、本胃炎の発症の直接の原因と考えられるプロトン漏出により影響を受け、現状で最も早期に発現を開始することが確認されているIL-1βの発現細胞をin situ hybridizationや免疫学的な可視化法による同定を進め、胃内腔を取り囲む上皮細胞でシグナルの亢進を予備的に確認している。 また、好中球優位の活動性胃炎が続くCldn18KOおよび、高度なマクロファージ/リンパ球の浸潤をともなうCldn18KOとWnt1との2重変異マウスの追跡も行ってきた。しかし、加齢マウスでも、癌化の出現は認められていない。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度: 好中球優位の活動性胃炎が続くCldn18KOおよび、高度なマクロファージ/リンパ球の浸潤をともなうCldn18KOとWnt1との2重変異マウスの追跡も行ってきた。しかし、加齢マウスでも、癌化の出現は認められていない。本マウスでは、マクロファージの浸潤など、胃がんを生じる炎症の下地の多くは構築されている。しかし、好中球優位の炎症が続く。そこで、DSSや高食塩による負荷により、炎症の慢性炎症化(リンパ球優位型)と発癌相関についての検討を進める。 また、平成25年度で完結していない、胃炎を惹起するIL-1β発現細胞のシグナル経路についての検討をさらに進める。 Cag-Tgマウスでは、上皮細胞の極性の異常が認められる可能性があり、Claudin-18ノックアウトマウスでの極性異常や、異形成出現前後の細胞分化状態や細胞の増殖状態についても詳細な検討を進める。 主な対象である胃型クローディン18マウスのみではなく、炎症を惹起する他のクローディンノックアウトマウスでの炎症と発がんについての検討も進める。特に、あるクローディンノックアウトマウスでは、腸での自然発症炎症を認める。慢性炎症性腸疾患と発がんとの関係を想定した解析として、追跡する。
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