2013 Fiscal Year Annual Research Report
チロシンホスファターゼShp-2を介した発がんスパイラル機構の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Conversion of tumor-regulation vector to intercept oncogenic spiral accelerated by infection and inflammation |
Project/Area Number |
25114709
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
小谷 武徳 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40455960)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | チロシンホスファターゼ / Shp-2 / 腸上皮細胞 / 腸内細菌 / 炎症性腸疾患 |
Research Abstract |
本研究では腸管での感染、炎症、発がんにおけるチロシンホスファターゼShp-2の役割について明らかにすることでShp-2を介した発がんスパイラル機構の解明を目指している。そこで平成25年度はShp-2の腸上皮細胞特異的なコンディショナルノックアウト(Shp-2 CKO)マウスを用いて、腸上皮細胞におけるShp-2の生理機能について解析を試みた。その結果、Shp-2 CKOマウスは腸炎を発症し、生後3-4週で致死となることが明らかとなった。またShp-2 CKOマウスでは吸収上皮細胞やゴブレット細胞の減少が認められ、一方でパーネット細胞の増加が認められた。さらにShp-2 CKOマウスでは腸上皮細胞の腸絨毛頭頂部への移動が抑制されていることも明らかとなった。一方、Shp-2 CKOマウスの腸管からクリプトの単離培養を行ったところ、オルガノイドと呼ばれる三次元組織構造体の形成が顕著に抑制された。 これまでにShp-2は増殖因子によるRas-MAPKシグナル伝達経路の活性化に必須な分子として知られている。そこでShp-2 CKOマウスと活性型k-ras遺伝子を有するマウスの交配により腸上皮細胞特異的にShp-2を欠損しながらも活性型K-Rasを発現するマウスを作製したところ、このマウスではShp-2 CKOマウスで認められた腸炎の発症やゴブレット細胞の減少が認められなかった。以上の結果からShp-2はRasの活性化を介して腸上皮細胞の恒常性を維持し、腸炎の発症に対して抵抗性を示すことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では腸管での感染、炎症、発がんにおけるチロシンホスファターゼShp-2の役割について明らかにすることでShp-2を介した発がんスパイラル機構の解明を目指しているが、発がんの端緒となりうる腸炎の発症に対してShp-2は抑制的に機能しているを明らかにすることができ、これまでの成果が今後の研究の発展につながることが大いに期待出来るため。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの腸上皮細胞特異的Shp-2 CKOマウスの解析により、チロシンホスファターゼShp-2は腸上皮細胞の移動や分化に重要な役割を担い、腸炎の発症に対して抑制的に機能することを明らかにすることが出来た。そこで今後はこれまでの研究を継続すると同時に、新たに以下の研究を進める。 I. 腸内細菌がShp-2を介した腸上皮細胞の恒常性に及ぼす影響に関する解析 前年度までにShp-2は腸上皮細胞の移動や分化を制御することを見出したが、最近私共は腸内細菌が腸上皮細胞の移動速度や分化に影響を与えることも確認している。そこで、腸内細菌のどのような成分がShp-2を介した腸上皮細胞の移動、分化に影響を与えるのかについて明らかにしていく。具体的には野生型マウス由来もしくはShp-2 CKOマウス由来の腸細胞について三次元培養を行い、培養液中に菌体成分や菌の代謝物を加えることによって起こる変化を観察することで、どのような分子がShp-2を介して腸上皮細胞の恒常性を維持しているのかについて明らかにしていく。 II.大腸がん発症に対するShp-2の寄与に関する解析 Shp-2とがん発症の関係性について解析を行う。具体的には腸管での発がんモデルマウスとして知られるApc min/+マウスとShp-2 CKOマウスの交配を重ね、Shp-2 CKO / Apc min/+マウスを作製する。このマウスにつき、コントロールマウスと組織学的に比較することで、Shp-2機能抑制が腸管での発がんに与える影響を明らかにする。
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