2013 Fiscal Year Annual Research Report
嗅覚情動行動を担う嗅皮質機能単位の解析
Publicly Offered Research
Project Area | Mesoscopic neurocircuitry: towards understanding of the functional and structural basis of brain information processing |
Project/Area Number |
25115708
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山口 正洋 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (60313102)
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Project Period (FY) |
2013-06-28 – 2015-03-31
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Keywords | 嗅結節 / 情動行動 / rabies virus / ドーパミン |
Research Abstract |
嗅覚は個体維持や種保存に関わる行動と強く結びついている。嗅覚行動は強い情動によって駆動されるがその神経回路機構は不明である。我々は、匂い刺激に対するマウスの誘引行動と忌避行動時において、嗅皮質の一領域である嗅結節の異なるドメインが活性化することを見出した。嗅結節はドーパミン投射を受ける腹側線条体でもあり、情動行動との関連が強く示唆される。本研究はこの嗅結節ドメインを嗅覚情動行動の機能単位と考え、その回路構築と機能を理解することを目的としている。本年度の実験により以下のことが明らかとなった。 ・最初期応答遺伝子であるc-fos mRNAの発現を指標に検討したところ、匂いに対する誘引行動の際、嗅結節の前内側ドメイン第2層のニューロン(medium-sized spiny neuron; MSN)が活性化した。嗅結節ニューロンには1型ドーパミン受容体(D1R)発現ニューロン(D1R細胞)と2型ドーパミン受容体(D2R)発現ニューロン(D2R細胞)があるが、D1R細胞が優位に活性化した。 ・匂いに対する忌避行動の際、嗅結節の外側ドメインcap領域のD1R細胞(dwarf細胞)が活性化した。内側ドメイン第2層のニューロンも活性化したが、D2R細胞が優位に活性化した。 ・嗅結節前内側ドメインにrabies virusを注入し、この領域に前シナプス結合するニューロンの分布を調べた。この領域のニューロンは梨状皮質、前頭前皮質など様々な脳領域から軸索投射を受けており、嗅球からは主にその腹側領域の投射ニューロンから投射を受けていることが示唆された。 ・イムノトキシンを用いて嗅結節前内側ドメインのD1R細胞の除去実験を行ったところ、マウスの摂食行動の抑制傾向が観察され、このドメインが摂食行動を促進する働きを持つことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
情動行動に対応して活性化する嗅結節ドメインの局在性に加え、MSNやdwarf cellなど異なる細胞種ごとの特徴的な活性化パターンを明らかにすることができた。同時に嗅結節の生後発達について検討を進めており、マウスの離乳期に嗅結節の発達が促進することが分かってきた。マウスが離乳して新しい食べ物を学習していく過程に嗅結節の役割が重要ではないかと考えられた。 嗅結節ドメインの回路構築を理解するためのRabies virusによるトレーシングについては、ベクターの改良を行って、より明瞭に起点となるニューロンを同定し、高い経シナプス性トレーシング効率が得られるようになった。今後より限定した領域へのウイルス注入、また起点をD1R細胞あるいはD2R細胞に限定することで、ドメインおよび細胞種特異的な回路構築を明らかにする基盤が得られた。また同時に、古典的なretrograde tracer (Cholera toxin B)を使って、おおまかな投射経路の知見を得ることも進めている。 細胞除去による機能解析は、イムノトキシンの注入技術が向上し、効率よく実験ができるようになってきている。より限定した領域へのトキシン注入、D1R細胞あるいはD2R細胞特異的な除去により、ドメインおよび細胞種特異的な機能理解を行う基盤ができた。また、薬理学的にニューロンの活動を促進・抑制するDREAAD systemを導入し、実験を開始している。 以上、嗅結節の機能ドメインの同定、その回路構築、機能解析について、ほぼ当初の計画通り進んでいると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
・嗅結節前内側ドメインおよび嗅結節外側ドメインへのrabies virus注入によって、これらの領域がどの脳領域からの軸索投射を受けるかを比較検討する。D1R promoter-Cre マウス、D2R promoter-Cre マウスを用いて、ドメインおよび細胞種特異的な回路構築を明らかにする。嗅球、他の嗅皮質領域、扁桃体、前頭前皮質などを中心に解析する。また同時に、古典的なretrograde tracer (Cholera toxin B)を使って、おおまかな投射経路の知見を得ることも進める。異なる蛍光標識のついたCholera toxin Bを同一個体の異なるドメインに注入することで、各ドメインの回路構築様式の違いをより明確にできると期待される。 ・嗅結節ドメインの機能解析として、イムノトキシンによるD1R細胞あるいはD2R細胞特異的な細胞除去に加え、化学遺伝学によるD1R細胞あるいはD2R細胞特異的な機能促進・抑制実験を行う。D1R promoter-CreあるいはD2R promoter-Creマウスの嗅結節前内側ドメインあるいは外側ドメインに、Cre依存的なDREADD分子発現ウイルスを投与し、各ドメインのD1R細胞あるいはD2R細胞特異的な機能促進・抑制を行う。細胞除去よりも短時間に機能変化を誘導できるため、より明瞭な機能解析が可能になると期待される。 ・嗅結節の生後発達について検討を進める。マウスが離乳して新しい食べ物を学習していく過程に嗅結節の役割が重要ではないかと考えており、上記の機能抑制の手法を用いてこの可能性を検証していく。
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Research Products
(5 results)
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[Journal Article] Continuous postnatal neurogenesis contributes to formation of the olfactory bulb neural circuits and flexible olfactory associative learning.2014
Author(s)
Sakamoto, M., Ieki, N., Miyoshi, G., Mochimaru, D., Miyachi, H., Imura, T., Yamaguchi, M., Fishell, G., Mori, K., Kageyama, R., Imayoshi, I.
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Journal Title
Journal of Neuroscience
Volume: 34
Pages: 5788-5799
DOI
Peer Reviewed
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