2013 Fiscal Year Annual Research Report
複数のリズムを内在する神経ネットワークの推定手法の開発と機能的意味の検証
Publicly Offered Research
Project Area | Mesoscopic neurocircuitry: towards understanding of the functional and structural basis of brain information processing |
Project/Area Number |
25115719
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
青柳 富誌生 京都大学, 情報学研究科, 准教授 (90252486)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 脳・神経 / 位相振動子 / ネットワーク / リズム |
Research Abstract |
様々な神経活動の中でも,ニューロンが回路を形成し互いに相互作用することで現れる典型的な挙動としてリズム(周期的神経活動)がある.最近の実験技術の著しい進歩により,課題遂行中の脳活動を計測するイメージング技術や,神経細胞の光トポグラフィー等,脳全体のマクロなレベルから1ニューロンのミクロなレベルまで膨大な実験的知見が蓄積されつつある.それに伴い様々なリズムが機能との関わりも含め報告されている.しかし,そのような神経活動が示すリズムの生成機構や機能的役割はよくわかっておらず,依然として解明すべき点が多い.そのような神経リズムを研究する上で,メゾ神経回路は機能単位として最小かつ最適な系である.以上の観点で,下記の二つのテーマに関して研究を実施した. 本研究の第一のテーマの目的は,リズミックな活動を示す局所回路等の実験データからリズム間の機能的ネットワーク構造の統計的推定手法を開発し,複数の測定部位のリズム活動が如何なる関係にあるのか,力学系の観点から定量的に明らかにすることである.具体的には,単一ニューロンや局所回路が生み出すリズム間の機能的結合と個々のリズムの周波数や揺らぎの大きさを,力学系モデルとして詳細モデルを経由せずに,推定する手法を開発した. 第二のテーマの目的は,一見不可解な解剖学的知見に関して,リズム活動から見ることで新たな側面機能的意味をから検証することである.具体的には,抑制性のFast Spiking neuron間において,遠位の樹状突起に抑制性シナプス結合を互いにしている解剖学的知見がある.これは,近位に興奮性結合がある場合,一見意味のない結合に思えるかもしれない.しかしながら,樹状突起の遠位に抑制,近位に興奮性シナプス結合がある場合,たとえ弱い抑制性シナプス結合でもリズムを制御している可能性に関して,理論解析を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の第一の目的である,リズミックな活動を示す局所回路等の実験データからリズム間の機能的ネットワーク構造の統計的推定手法を開発することに関しては,詳細モデルを経由せずに,神経データから直接縮約した力学系を推定する手法を開発した.提案手法では,リズム間の相互作用が一方向的か双方向的か(リズム間の因果性)も考察可能である.Hodgkin-Huxleyタイプのモデルから生成した模擬データ(理論的に縮約した力学系を導出可能である)を用いて,数十から百程度の素子数に対して推定が可能になっている. 第二のテーマの目的は,一見不可解な解剖学的知見に関して,リズム活動から見ることで新たな側面機能的意味をから検証することに関しては,樹状突起の遠位に抑制,近位に興奮性シナプス結合がある場合,たとえ弱い抑制性シナプス結合でもリズムを制御している可能性を理論的に検討した.コンパートメントモデルを用いて位相縮約により解析を行った結果,ギャップ結合が存在する場合に,細胞体より中程度の距離の樹状突起上にシナプス結合を有すると,多様なリズムのパターンを生成可能である点が示された. 以上の結果から,おおむね順調に研究は進展していると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の第一の目的である,リズミックな活動を示す局所回路等の実験データからリズム間の機能的ネットワーク構造の統計的推定手法を開発することに関しては,LFPなどのマクロな集団リズムと個別のニューロンの機能的結合の定量化も検討し,実験データの解釈に新たな視点を提供することを目指す.手始めに素子数が少ない実データとして,EEGデータ,概日リズムやロコモーションのデータなどに関して具体的に適用を行い,解析手法の有用性を示したい.. 第二のテーマに関しては,シナプス結合強度を学習等により調整することで,様々な位相パターンを実現可能であることを,より具体的な生理学的知見と照らし合わせ,計画班A01との共同研究も開始する予定である.特に,ニューロンの形状や電気的特性と比較検証し,領野間のシナプス結合部位の差が,リズムという機能で見たときどのような異議があるか,理論的側面から解析を行いたい.
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Research Products
(10 results)