2013 Fiscal Year Annual Research Report
ストレス応答性転写因子NPAS4欠損マウスにおけるGABA神経発達と表現型解析
Publicly Offered Research
Project Area | Unraveling micro-endophenotypes of psychiatric disorders at the molecular, cellular and circuit levels. |
Project/Area Number |
25116515
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
山田 清文 名古屋大学, 医学部附属病院, 教授 (30303639)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | Npas4 / BDNF / GABA受容体 / 神経発達 / ストレス / シナプス可塑性 |
Research Abstract |
ストレスが抑制性GABA作動性神経の機能を障害し、脱抑制により興奮性神経系の活動が亢進することが精神疾患発症の要因の一つと考えられているが、その分子機構は明らかではない。我々は (a) GABA神経発達に関わる転写因子Npas4がストレスで増加するグルココルチコイド(GC)により転写抑制を受けること、(b)NPAS4がCdk5の誘導を介して培養神経細胞の神経突起伸長を促進すること、(c) Npas4遺伝子欠損(Npas4-KO)マウスがストレス誘発性行動異常に類似した認知・学習記憶障害(プレパルス抑制の障害、海馬依存性恐怖記憶障害)を呈することを見出している。そこで、ストレス(脳外環境要因)によるNpas4発現低下がGABA神経障害(マイクロエンドフェノタイプ)を誘発し、認知障害などの精神症状(エンドフェノタイプ)を発症させるとの仮説を立てた。本研究では、NPAS4の発現低下がGABA神経の機能障害を誘発するかどうか検討する。平成25年度においては、Npas4-KOマウスの成獣は、状況依存的すくみ行動(海馬依存的恐怖記憶)、プレパルス抑制(感覚情報処理)およびロタロッド試験における運動学習に異常があることを明らかにし、これら行動障害に関連する脳部位におけるGABA受容体遺伝子発現の変化を解析した。 その結果、側坐核や線条体ではGABA(a)受容体α1, 3, 5サブユニットの発現低下とα2サブユニットの発現増加、小脳ではα1, 4, 5、β2, 3およびγ1, 2, 3各サブユニットの発現低下が認められた。一方、出生直後から成獣に至るまでのGABA(a)受容体サブユニットの発現変動には野生型マウスとNpas4-KOマウスとの間で顕著な差は認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、NPAS4の発現低下がGABA神経の機能障害を誘発するかどうか検討するために、(1) Npas4-KOマウスの行動異常に関連するGABA神経機能の解析、(2) Npas4-KOマウスにおけるGABA神経発達異常の解析、(3) Npas4-KOマウスにおける脳部位特異的Npas4遺伝子レスキューがGABA神経発達に及ぼす影響の解析について計画した。平成25年度には、このうち最初の2つの試験について概ね終了し、(3)を実施するためのウイルスベクターの構築を行った。その他、ストレスによるNpas4遺伝子発現のエピジェネティクス制御(Npas4遺伝子のメチル化頻度の上昇)という興味ある知見を得た。 したがって、本研究課題は概ね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、Npas4-KOマウスにおける脳部位特異的Npas4遺伝子レスキューが本マウスの行動異常ならびにGABA受容体発現に及ぼす影響について検討する。また、ペンチレンテトラゾール誘発キンドリングマウスのシナプス可塑性におけるNpas4の関与について、BDNFの誘導との関連から検討する予定である。さらに、本研究で得られた成果を取り纏め、成果の発表を行う。
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