2013 Fiscal Year Annual Research Report
エピジェネティクスと組織化学的手法によるPTSDの病態解明と予防法の開発
Publicly Offered Research
Project Area | Unraveling micro-endophenotypes of psychiatric disorders at the molecular, cellular and circuit levels. |
Project/Area Number |
25116518
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
森信 繁 高知大学, 教育研究部医療学系, 教授 (30191042)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 外傷後ストレス障害(PTSD) / グルココルチコイド受容体 / スパイン / 海馬 / 動物モデル |
Research Abstract |
外傷後ストレス障害(PTSD)の動物モデルであるsingle prolonged stress (SPS)負荷ラットを用いて、PTSDの病態機序解明のため以下の研究を行った。 1) グルココルチコイド受容体(GR)情報系の研究:SPS負荷ラット海馬を対象に抗GR抗体を用いたWestern blot法によって、SPS負荷後1時間から8時間の間でGRの核内移行が有意に増大しており、負荷後24時間の時点では負荷前に戻る事を発見した。GRの核内移行のピークは、SPS負荷後2時間であった。SPS負荷後の海馬組織と抗GR抗体による、免疫沈降法を行った。 2) SPS負荷後のHDAC阻害薬投与による予防法の開発:SPS負荷直後・1, 2, 24, 48時間後にVorinostatを投与して、SPS負荷後7-8日目に恐怖条件付け試験(FC)を行ったが、対照群(未処置ラットのFC後)と比べてfreezing時間に有意な延長がみられていた。 3) SPSによる海馬のスパインの形態変化の解析:SPS負荷後7日目のラット海馬を用いて、FD Rapid GolgiStain Kitによるゴルジ染色法で解析を行った。SPS負荷によって海馬CA1, CA3領域の錐体細胞の樹状突起スパインの数に、統計的には有意ではなかったが減少がみられた。 本年度の研究結果から、PTSDの病態機序にストレスによる海馬GR情報系の亢進を介した遺伝子発現の変化の関与が推測された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究実施状況としては、以下のような点から研究計画に遅滞なく実験が実施されている。 GR情報系の解析に関しては、既にSPSラット海馬を用いてSPS負荷後のGRの核内移行のタイム・コースを、Western blot法にて明らかにしており、次年度に行うChIP-Sequencing法のための海馬組織の抗GR抗体を用いた免疫沈降も行っている。HDAC阻害薬を用いた恐怖記憶の固定化の阻害によるPTSD予防法の開発については、SPS負荷後の多様な時点でHDAC阻害薬の投与を行い、FCによる恐怖記憶の固定化亢進に対する作用を行動学的に解析した。Golgi染色法による海馬樹状突起スパインの形態変化の解析については、既に方法論の開発を済ませ、SPS負荷ラットでスパイン数の減少がみられる結果を得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
グルココルチコイド受容体(GR)情報系の研究:本年度に行ったSPS負荷ラットと未処置ラット(対照群)の海馬組織の抗GR抗体による免疫沈降産物を用いて、下記のような方法でChIP-Sequencingを行い、スパイン形態に関連する遺伝子の発現障害を同定する。免疫沈産物からDNAを分離してIllumina社のGenome Analyzer IIxを用いてSequence後に、UCSC rat genome browserにてmappingを行い、mapされた領域の近傍に位置する遺伝子を抽出する。SPS負荷後のHDAC阻害薬投与による予防法の開発:本年度と異なった時点でのVorinostat投与を行い、予防法の開発を行う。SPSによる海馬のスパインの形態変化の解析:本年度と同様にGolgi染色法を用いて、多数例での解析を行い、スパイン数や長さのSPS負荷による変化を解析する。恐怖記憶の消去障害の修復によるスパイン形態の変化の解析:SPS負荷ラットにFCを行いVorinostatを投与して、恐怖記憶の消去障害の回復した時点での海馬樹状突起スパインの形態変化を、Golgi染色法を用いて解析する。
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