2013 Fiscal Year Annual Research Report
微細な組織構築の異常をマイクロエンドフェノタイプとした精神病態の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Unraveling micro-endophenotypes of psychiatric disorders at the molecular, cellular and circuit levels. |
Project/Area Number |
25116522
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
久保 健一郎 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (20348791)
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Project Period (FY) |
2013-06-28 – 2015-03-31
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Keywords | 大脳皮質 / 海馬 / 組織構築 / 発生 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、微細な組織構築の異常が、回路網形成にどのような影響を生じ、さらに成熟マウスの脳機能や行動にどのような影響を及ぼすのかを解析する。脳の微細組織構築の異常を持つ動物モデルとして、胎児期の代表的な環境要因である胎児(脳)虚血によってもたらされる、脳の微細な組織構築異常を伴うマウス、および、子宮内胎児電気穿孔法を用いて、脳の部位特異的に異所性皮質を誘導し、組織構築の異常を人為的に生じたマウスを用いて、微細組織構築の異常がどのように病態に関与するのか、その病態メカニズムの解明を行った。 また、微細組織構築の異常を解明する際に、解析の基盤となるための発生過程における神経細胞移動様式の解析を、特にこれまでに不明な点が多い海馬について行った。その結果、海馬の脳室帯で新たに誕生した神経細胞は、多極性移動を行いながら脳室帯近傍にしばらく留まることが分かった。一定期間、脳室帯のすぐ近傍で留まったあと、海馬の神経細胞は、複雑な分岐を持つ多くの先導突起をさかんに伸縮して、異なる複数の放射状グリア線維につかまりながら、ゆっくりとした速度で移動していくことを見いだした。また、海馬の神経細胞は、ある程度移動したら一時停止して、まるで足場を探るようにして再び複数の方向に突起をのばし、足場となる放射状グリア線維を交代させながら移動した。その結果、海馬の神経細胞はジグザグとゆっくり移動していくことが明らかになった。海馬の神経細胞移動はロッククライマーの動きにも似ているため、新たに見いだしたこの細胞移動様式を「クライミング様式”Climbing mode”」と命名して発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
微細組織構築の異常が、どのように精神病態に関与するのか、その病態メカニズムを明らかにする際に、その解析を行うための動物モデルを複数確立できた。また、微細組織構築の異常を解明するためにその基盤となる発生過程における神経細胞移動様式の解析を、特にこれまでに不明な点が多い海馬について行ったところ、解析が想像以上に順調に進み、海馬が形成される際の神経細胞の移動様式を明らかにしてこれを報告することができた。この点では研究は当初の計画以上に順調に進展したが、一方で、解析を行うための動物モデルとして想定していた、脳の微細組織構築の障害を持つことがすでに知られている遺伝子改変マウス(ApoER2 KOマウス、VLDLR KOマウス)については、予期しない感染事故が発生し、クリーニングを行った上で再度必要なマウスの確保を行う必要が生じた。このため、全体としては概ね順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
解析を行うための動物モデルとして想定している、脳の微細組織構築の障害を持つことがすでに知られている遺伝子改変マウス(ApoER2 KOマウス、VLDLR KOマウス)については、再度必要なマウスの確保を行って研究を推進する。その他の動物モデルとして想定していた、胎児期の代表的な環境要因である胎児(脳)虚血によってもたらされる脳の微細な組織構築異常を伴うマウスや、子宮内胎児電気穿孔法を用いて、脳の部位特異的に異所性皮質を誘導して組織構築の異常を人為的に生じたマウスについては、当初の計画通りにそれらを用いて、微細組織構築の異常がどのように病態に関与するのか、その病態メカニズムの解明を行う。
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Research Products
(7 results)
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[Journal Article] Dab1-mediated colocalization of multi-adaptor protein CIN85 with Reelin receptors, ApoER2 and VLDLR, in neurons.2013
Author(s)
Takahiro Fuchigami, Yutaka Sato1, Yuya Tomita1, Tetsuya Takano, Shin-ya Miyauchi, Yukinori Tsuchiya, Taro Saito, Ken-ichiro Kubo, Kazunori Nakajima, Mitsunori Fukuda, Mitsuharu Hattori, and Shin-ichi Hisanaga
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Journal Title
Genes to Cells
Volume: 18 (5)
Pages: 410-424
DOI
Peer Reviewed
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