2013 Fiscal Year Annual Research Report
細胞質分裂をつかさどる逆平行微小管超分子マシナリーが動く仕組み
Publicly Offered Research
Project Area | Harmonized supramolecular machinery for motility and its diversity |
Project/Area Number |
25117509
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
上原 亮太 北海道大学, 創成研究機構, 特任助教 (20580020)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 細胞質分裂 / 微小管 / 分子モーター / 自己組織化 |
Research Abstract |
動物細胞分裂において、分離した染色体の間に「中央紡錘体」とよばれる微小管構造が形成される。中央紡錘体の真ん中に並ぶ「ステムボディー」構造は細胞質分裂の開始と完了を制御し、遺伝情報の正確な分配を保証する。本研究課題では、機能的な中央紡錘体の形成および正確なステムボディー構造の空間配置がどのように制御されるかを明らかにすることを目標としている。本研究におけるこれまでの成果として、我々は中央紡錘体微小管の長さ制御因子として微小管脱重合キネシンKif2Aを同定した。Kif2Aの機能低下または亢進は中央紡錘体微小管の異常伸長または短縮を引き起こし、ステムボディーの細胞内配置や細胞質分裂の進行に重篤な障害をもたらした。このことから、Kif2A機能の厳密な調整が分裂制御に必須であることがわかった。さらに微小管動態の数理モデル解析と実験を組み合わせたアプローチにより、中央紡錘体の中央に形成されるAurora Bキナーゼのシグナル勾配が、リン酸化を通してKif2Aの機能を負に調整することでKif2A依存的な微小管脱重合活性を中央紡錘体の両端に限定し、中央紡錘体のサイズおよびステムボディーの配置を保証する仕組みを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究課題においては、細胞質分裂の制御を司る超分子細胞構造「ステムボディー」の運動機構および空間配置制御機構を明らかにすることを目指している。そのような目的のもと、25年度には生細胞イメージングおよび逆遺伝学的解析により、ステムボディーの運動特性およびその制御に関わる因子の特定を目指し、26年度には顕微操作実験と数理モデル解析実験を組み合わせて、ステムボディーの運動制御に関わる物理モデルの構築を目指している。 25年度の研究成果として、3次元生細胞イメージングによりステムボディーの運動、集合パターンを明らかにし、運動制御に関わる因子として、微小管脱重合キネシンおよびその調節因子AuroraBを同定し、それらの機能の空間制御機構を明らかにした。これにより、25年度の当初の研究目標はおおむね達成できたと考えられる。さらに、それらの成果を元に、26年度から着手する予定であった数理モデル解析に着手し、キネシン機能の空間制御が正確なステムボディーの位置制御を実現する物理的仕組みに関する数理的検証を行うことに成功した。これらの成果をまとめて、「Aurora B and Kif2A control microtubule length for assembly of a functional central spindle during anaphase.」という題の学術論文として Journal of Cell Biology 202:623-636 (2013)に発表した(申請者が筆頭著者で、協同責任著者を務めた)。本論文は同誌の特集記事「In Focus」で注目論文として取り上げられた。以上の成果が得られたことから、当初の目標以上の進展があったと判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題のここまでの進捗を元に、今後は細胞装置の物理的操作実験を中心とした以下の研究計画により、分裂細胞が分裂シグナル情報を細胞の中央にあつめる物理的仕組みの解明を目指す。 1)膜除去中央紡錘体モデルを用いたステムボディー運動の生物物理学的解析。ステムボディー運動の生物物理学的計測を可能にするため、GFP-チューブリン発現細胞を分裂期後期に同調培養して、海綿活性剤処理によって細胞膜除去を行い、ステムボディーを単離することで実験モデル化する。このモデルを用いて、全反射顕微鏡によって蛍光標識チューブリンの取り込みや微小管滑り運動を可視化し、微小管ダイナミクスとステムボディーの動態制御の関連を探る。 2)ステムボディー運動の方向性を決めるステムボディー間連絡の実態の解析。ステムボディー間の物理的連携の可能性に着目し、穿孔や油滴注入およびマグネットビーズ導入などによりステムボディーを隔離したり、レーザー照射によって周囲のステムボディーを破壊したりした場合に、ここのステムボディーの運動にどのような影響が出るかを調べる。 3)ステムボディー運動制御に関する数理的解析。上記の実験結果を総合して、ステムボディーの運動制御の仕組みを理解するために、25年度に構築した中央紡錘体数理モデルに上記実験結果を反映させ、さらに精度の高いシミュレーションの実施を試みる。
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[Journal Article] Aurora B and Kif2A control microtubule length for assembly of a functional central spindle during anaphase.2013
Author(s)
Uehara, R, Tsukada, Y., Kamasaki, T., Poser, I., Yoda, K., Gerlich, D.W., and Goshima, G.
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Journal Title
Journal of Cell Biology
Volume: 202
Pages: 623-636
DOI
Peer Reviewed
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