2013 Fiscal Year Annual Research Report
ヒストン脱メチル化酵素(KDM)による造血分化制御機構の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Molecular mechanisms of cell fate determination in the cells that undergo stepwise differentiation to multiple pathways |
Project/Area Number |
25118713
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
河原 真大 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80617449)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ヒストン脱メチル化酵素 / 白血病 / 骨髄異形成症候群 / KDM1A / 血球分化 / 転写因子 |
Research Abstract |
ヒストンメチル化は、遺伝子の発現調節に重要な役割を果たすエピジェネティクス機構の一つであり、その異常は白血病などの造血器腫瘍の発症・維持に深く関与する。本研究の目的は、ヒストン脱メチル化酵素(KDMs)に関して、正常造血幹細胞の維持や分化、白血病の発症・維持にどのような影響を及ぼすのかを解明し、将来の白血病新規治療薬につながるような基盤的なデータを得ることである。 本年度は、我々が新たに開発した新規KDM1A阻害剤を中心に解析を行った。まず、MLL-AF9マウス白血病モデルでの検討したところ、0.3uMで増殖能力が完全に失われた。正常マウス骨髄のコロニー形成能力は、5~10uMでも障害されなかったことから、このモデルでの白血病維持はKDM1Aに強く依存していることが示唆された。さらに形態学的および細胞表面マーカー解析などから、阻害剤によって芽球様細胞が骨髄単球系へ分化誘導されていることが確認された。これは、KDM1Aが、白血病細胞の分化停止に関与していることを示唆している。 次に、ヒト白血病および骨髄異形成症候群由来細胞株で検討を行った。数種類の細胞株において1uM以下の低濃度で増殖能力低下が認められ、骨髄単球系への分化誘導が確認された。特に面白いことに、赤血球系へ分化した細胞株HELにおいても、阻害剤によって赤血球系マーカーが減弱し、骨髄単球系の分化マーカーが増強していた。そこで、このHELで遺伝子プロファイリング解析を行ったところ、転写因子の発現パターンが、赤血球系パターン(GATA-1などの亢進)から骨髄単球系パターン(CEBPA, PU.1などの亢進)へ完全にスイッチしていることがわかった。 以上のデータから、KDM1Aは血球分化に関わる重要な転写因子の発現調節に密接に関わり血球分化決定の必須因子であることが明らかになった。なお、これら阻害剤は現在国際特許申請中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
KDM1Aが血球分化に必須の転写因子の発現を調節していること、それも各個バラバラに調節しているのでなく、骨髄単球系分化に必須の複数の転写因子を「群」として調節していることが明らかになった。このように、造血のマスター因子である転写因子群のパターンが、エピジェネティクスに関わるたった一つの因子によってチューニングされうることは大きな驚きであり発見である。 また、我々が新規開発したKDM1A阻害剤が、数種の白血病細胞に対して、正常骨髄に影響を及ぼさない濃度で、分化誘導を引き起こして、抗白血病効果を発揮することを見出しした。これは、本研究の最終目標である「将来の白血病新規治療薬につながるような基盤的なデータ」の第一歩となる重要な成果である。 さらに、我々の新規薬剤は、現在国際特許(PCT)申請中である。
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Strategy for Future Research Activity |
1) KDM1Aはヒストン3蛋白の4番目のリジン残基のメチル化(H3K4me1/2)を外して遺伝子の発現を抑制する方向に働く酵素である。KDM1A阻害によって発現が上昇する遺伝子群のプロモーターおよびエンハンサー領域のヒストンメチル化プロファイルがどのように変化するかを、ChIP-Seqで解析し、KDM1Aがより直接的に支配している因子を見つけ出す。同時に、ヒストンメチル化プロファイルが変化する領域は、その遺伝子の発現調節に極めて重要であるので、この領域に結合する他の因子をモチーフ解析などからあぶりだし、KDM1Aがどういった因子と協調して働くのかを解析する。 2) 将来の臨床応用を見据えて、実臨床検体に対する効果を検定する。具体的には、免疫不全マウスに白血病検体を接種して病気を再現させた後、阻害剤を投与して治療し、マウスの生存や白血病の駆逐にどの程度貢献するのかを解析する。 3) KDM1A以外にも、白血病や骨髄異形成症候群で発現が亢進しているKDMsを複数同定している。これらのKDMsを造血幹細胞や前駆細胞に強発現することで、造血分化にどのような影響を与えるか、白血病細胞などでノックダウンすることで自己複製能力や増殖・分化にどのような影響を与えるのかなどを検討する。
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Research Products
(11 results)