2013 Fiscal Year Annual Research Report
制御性T細胞の不可逆的運命決定機構の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Molecular mechanisms of cell fate determination in the cells that undergo stepwise differentiation to multiple pathways |
Project/Area Number |
25118733
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
|
Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
堀 昌平 独立行政法人理化学研究所, 統合生命医科学研究センター, チームリーダー (50392113)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 細胞運命 / 制御性T細胞 / 転写制御 / エピジェネティック制御 / シグナル伝達 |
Research Abstract |
本研究は、Treg分化の過程でFoxp3+ T細胞が可塑性を失ってTregへ不可逆的に分化するメカニズムを解明することを目指している。特に、抗原特異性とTCRシグナルの役割に着目し、Tregの運命決定を制御する外因的・内因的因子を明らかにしたい。今年度、以下の項目について研究を進めた。 1. TCRシグナル伝達経路の役割 これまでの研究から、Foxp3遺伝子のTreg-specific demethylation region (TSDR)脱メチル化を伴った安定なFoxp3発現を誘導するシグナルとしてTCRシグナル伝達経路が重要であると考えられた。試験管内におけるTreg分化系を用いてこの可能性を追求したところ、Foxp3発現の安定性とTSDR脱メチル化の誘導には持続的なTCRシグナルが重要であることが明らかになった。幾つかのシグナル伝達経路に対する阻害剤を用いた実験から、PI3K-Akt-mTOR経路の重要性が示唆された。また、経時的transcriptome解析から、持続的なTCR刺激依存的に活性化される幾つかのシグナル伝達分子、転写因子、クロマチン修飾因子が推定され、TSDR脱メチル化への関与が考えられた。 2. Foxp3によるFoxp3遺伝子発現の自己制御 これまでに、レトロウィルスを用いてナイーブCD4+ T細胞にFoxp3を強制発現させると試験管内においては内在性のFoxp3発現は誘導されないことを見いだしていた。しかしながら、この細胞をlymphopenicマウスに移入するとFoxp3依存的に一部のFoxp3導入細胞で内在性のFoxp3が誘導されることを新たに見いだした。このことから、Foxp3発現誘導にFoxp3自身が正に制御する自己制御が存在しているものの、この自己制御だけでは十分ではなく、生体内に存在する何らかのシグナルが重要であることが明らかになった。また、一部の細胞でのみ内在性Foxp3が誘導されることから、自己制御が働くためにはT細胞固有の性質にも影響されると考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度、Foxp3遺伝子のDNA脱メチル化と相関して活性化するシグナル伝達経路、転写因子、クロマチン修飾因子を同定することができたが、他の研究課題にも多くの時間を割かなければならなかったことなどから、なかなか機能解析にまでは進むことができかった。次年度の課題としたい。一方、Foxp3によるFoxp3発現の自己誘導をserendipitousに見つけることができた。この自己制御がTSDRの脱メチル化を伴うものであるのか等は次年度の課題であるが、Tregへの不可逆的運命決定に寄与すると考えられ、そのメカニズムの解明へ向けた一つの手がかりになると期待している。Treg運命決定の外因的制御機構に関しては、クローン内競合と転写因子Aireの役割に関して研究を進めた。この点に関しては明確な結果を得るためにサンプル数を増やす段階であり、本質的な進展が見られなかった。次年度には論文発表できるようにしたい。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度は、TSDR脱メチル化を誘導するTCRシグナルについて、得られた候補に関して阻害剤を用いた実験、レトロウィルスを用いた強制発現・ノックダウン実験を行って機能解析を進めてさらなる手がかりを得たい。また、Foxp3発現の自己制御に関しては、そのメカニズムと意義を明らかにするためには、TSDR脱メチル化を伴うのか、誘導されたFoxp3発現は安定であるのか検討することがまず重要であり、その結果によって次の方針が変わってくる。外因性制御に関しては、クローン内競合とAireの役割に関して解析を進めて論文発表を目指す。これらのプロジェクトに、次年度から研究室に加わる研究員1名と修士課程大学院学生1名を新たに本研究に従事してもらい、研究の推進と効率化を図る。
|
Research Products
(11 results)