2013 Fiscal Year Annual Research Report
ストレス環境が根端成長に及ぼす影響の数理モデル解析
Publicly Offered Research
Project Area | Integrated analysis of strategies for plant survival and growth in response to global environmental changes |
Project/Area Number |
25119707
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
|
Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
岩元 明敏 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (60434388)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 成長解析 / 数理モデル / シロイヌナズナ / 核内倍加 / アルミニウム |
Research Abstract |
平成25年度は、(1)解析手法の改善、(2)環境応答に関与すると考えられる遺伝変異体(myb3r1/3/5およびmyb3r4)の解析、(3)アルミニウムが根端成長に与える影響についての解析を行った。具体的な実績は以下の通りである。 (1)については、これまでの数理モデル解析では、皮層細胞列では核内倍加が1回だけ起きると仮定してゲノム複製を定量化していた。しかし、様々なストレス環境下の根端を解析した結果、この仮定条件では一部の根端で数理モデルによって算出されるコストが異常な値を示すことが分かった。そこで、2回の核内倍加を条件として数理モデルに組み込み、再解析を行った。この結果、異常なコスト値は算出されなくなり、信頼性の高い解析が可能となった。 (2)については、G2/M期遺伝子の転写活性化因子の変異体myb3r4の根端では、細胞増殖の活性が野生型よりも持続せず、体積増大のピークは根端の先端側にシフトしていることを明らかにした。一方、転写抑制因子の三重変異体myb3r1/3/5では、野生型よりも細胞増殖の活性が持続し、体積増大のピークは基部側にシフトしていることが分かった。これらの結果は、Myb転写因子が細胞増殖から核内倍加への移行を調節していることを示唆する。また数理モデルによる解析の結果、myb3r1/3/5ではゲノム複製コストがわずかに上昇する一方、体積増大コストは低下することが明らかになった。これは、MYB3R1/3/5が細胞増殖だけではなく、体積増大にも関与していることを裏付けている。 (3)については、成長解析の結果、アルミニウムイオン 600 uMを含む寒天培地で育成した場合、根端の細胞増殖、体積増大がともに低下していることが分かった。特に、細胞増殖域が縮小していたことから、アルミニウムによる根端伸長の阻害は細胞増殖の抑制にも起因していることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に記載したホウ素が成長に与える影響の解析については既にほぼ完了しており、アルミニウムが与える影響については25年度中に一定の成果が得られたことから、順調に進展していると言える。また、ストレス環境応答に関与する遺伝子群の変異体の解析については、当初予定していた遺伝子とは異なるものの、myb3r1/3/5、myb3r4について解析を進め、成果が得られていることから、おおむね順調に進展していると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、現在解析を行っているmyb3r1/4変異体の解析を完了させ、MYB3Rが根端成長に及ぼす影響を包括的に明らかにすることを目指す。また、研究計画にあるCKS RNAi株の解析についても完了させる。同時に、これら以外の環境応答に関わる遺伝子の変異体についても可能な限り解析に取り組む。 アルミニウムの解析については低濃度の影響についても解析を行い、低濃度から高濃度までのアルミニウムが根端成長に及ぼす影響を明らかにする。 以上と平行して、これまでの研究成果をまとめ、領域内他班で行われている分子生理学的解析の結果と本研究で取り組んできた数理モデル解析の比較を行い、両者の融合を目指す。
|