2013 Fiscal Year Annual Research Report
NIMA関連キナーゼによる形態形成と環境応答の協調機構の解析
Publicly Offered Research
Project Area | Integrated analysis of strategies for plant survival and growth in response to global environmental changes |
Project/Area Number |
25119715
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
本瀬 宏康 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (70342863)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | キナーゼ / 微小管 / 環境応答 / ストレス応答 / 細胞分裂 / 細胞伸長 / 形態形成 |
Research Abstract |
植物は生育環境の変化を敏感に感じとり、形態形成に反映させるが、その分子機構の理解は未だ不十分である。本研究では、植物のNIMA関連キナーゼ(NEK)ファミリーに着目し、形態形成と環境応答の協調機構を明らかにする。 1. シロイヌナズナNEKファミリーの機能解析:シロイヌナズナNEK1~NEK7の発現パターン、多重変異体の表現型を解析した。シロイヌナズナNEKファミリーは分裂組織などで特徴的な発現パターンを示した。nek多重変異体では、細胞分裂や細胞列が乱れること、葉や根などの器官成長が欠損することがわかった。また、NEK6の発現を効率よく誘導できる株を新たに確立した。NEK6の誘導株では、チューブリンがリン酸化され、細胞の伸長などに顕著な欠損が見られた。また、NEK6によるチューブリンのリン酸化部位を同定した。 2. NEKのストレス応答における機能:nek6やnek多重変異体ではストレス応答遺伝子の発現が低下し、ストレス耐性が低下することを示した。一方、nek6変異体で発現が増加するユニークな遺伝子郡を見出した。また、アブシジン酸がnek6変異体に類似した突起形成を引き起こし、この過程にアブシジン酸情報伝達経路や微小管制御因子が関わることが示された。 3. コケNEKの機能解析:ゼニゴケとヒメツリガネゴケのNEK遺伝子をクローニングし、系統解析から、シロイヌナズナNEK6と最もよく似ていること、コケにはNEKが1つしかないことを示した。ゼニゴケMpNEK1過剰発現体の作出と解析を行い、MpNEK1が細胞分裂に関わることが示唆された。 4. NEKと花成制御因子FT, TFL1の相互作用: NEKとFT, TFL1の結合解析を行った。また、nek ft, nek tfl1多重変異体を作出し、解析を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1. シロイヌナズナNEKファミリーの機能解析: NEKファミリーの発現や変異体の表現型解析から、NEKファミリーが細胞分裂や器官成長を冗長的に制御していることを明らかにした。これまで動物や菌類のNEKが細胞分裂に関わることが示されていたが、今回の結果から、植物のNEKは細胞分裂と細胞伸長の両方を制御することが初めて明らかになった。また、多細胞生物の発生におけるNEKの機能はほとんどわかっていなかったが、植物NEKの遺伝学的解析により、器官成長におけるNEKの機能を示すことができた。更に、NEKの発現誘導株を確立し、チューブリンのリン酸化部位を同定することができ、大きな成果を上げることができた。これにより、NEKによるチューブリンのリン酸化と、その細胞分裂・伸長における機能が明らかになることが期待される。 2. NEKのストレス応答における機能:nek変異体における遺伝子発現と表現型解析から、NEKファミリーがストレス応答に関わることを示すことができた。また、nek6変異体ではユニークな遺伝子の発現が変化していることを見出しており、今後、NEKによる遺伝子発現制御について興味深い知見が得られると考えられる。また、アブシジン酸が突起形成を引き起こすという興味深い結果を得ることができた。この成果は、環境応答と形態形成の結節点を理解する上で重要な知見をもたらすと考えられる。 3. コケNEKの機能解析:ゼニゴケとヒメツリガネゴケのNEK遺伝子をクローニングすることに成功した。アミノ酸配列の比較と系統解析から、植物のNEKは、シロイヌナズナNEK6と似た遺伝子から多様化したことが明らかになった。 4. NEKと花成制御因子FT, TFL1の相互作用: NEKとFT, TFL1が結合することを確認した。この相互作用の意味を明らかにするため、nek ft, nek tfl1多重変異体を作出し、解析を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
1. シロイヌナズナNEKファミリーの機能解析:今後もシロイヌナズナNEKファミリーの発現や変異体の解析を進め、その細胞分裂・器官成長における機能についてまとめたい。動物や菌類のNEKの研究は、培養細胞などを中心に進められており、多細胞生物の発生におけるNEKの機能はほとんどわかっていない。本研究により、植物のNEKのユニークな機能と、発生過程における役割が明らかになると考えられる。また、NEKの発現誘導株を新たに確立することができた。この系を用いることにより、植物体内でのNEKによるチューブリンのリン酸化とその機能を明らかにすることができると考えられる。更に、NEKによるチューブリンのリン酸化部位を同定することができた。チューブリンのリン酸化部位に変異を導入して発現させることで、その細胞内局在や微小管への影響、細胞分裂・伸長における機能が明らかになると考えられる。 2. NEKのストレス応答における機能:今後も、nek変異体における遺伝子発現と表現型解析を進め、まとめたい。 NEKファミリーがどのようにストレス応答に関わっているのか明らかにするため、ストレス応答時におけるNEKの局在や活性を明らかにする。nek6変異体で発現が変動する遺伝子の機能解析を進める。また、アブシジン酸による突起形成について論文としてまとめたい。 3. コケNEKの機能解析:今後は、ゼニゴケMpNEK1がどの組織や器官で発現しているのかをプロモーター解析により明らかにしたい。また、gene targetingにより、MpNEK1破壊株を作出し、機能解析を行う。ヒメツリガネゴケPpNEK1についても解析を進めたい。 4. NEKと花成制御因子FT, TFL1の相互作用: NEKとFT, TFL1の結合様式、細胞内での結合部位を明らかにしたい。また、nek ft, nek tfl1多重変異体の表現型解析を進める。
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Research Products
(7 results)