2013 Fiscal Year Annual Research Report
植物体内におけるケイ素吸収・輸送・集積過程のモデル解析
Publicly Offered Research
Project Area | Integrated analysis of strategies for plant survival and growth in response to global environmental changes |
Project/Area Number |
25119723
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | National Institute for Agro-Environmental Sciences |
Principal Investigator |
櫻井 玄 独立行政法人農業環境技術研究所, 生態系計測研究領域, 任期付研究員 (70452737)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ケイ素 / イネ / 数理モデル / トランスポーター / 作物成長モデル |
Research Abstract |
作物においてケイ素は重要なミネラルであり、作物の病害や倒伏を防ぐ上で重要な役割を果たす。従って、植物体内でケイ素がどのように吸収・輸送され、そして蓄積されるのかを明らかにすることは、すぐれた収量安定性の品種開発などのために重要な課題である。植物において、特にイネは、他の作物よりも多くのケイ素を吸収するが、本研究ではまず、これまでのケイ素の吸収・輸送に関わる分子生物学的な知見をもとに、イネの根におけるケイ素吸収過程の数理モデルを作成した。作成された数理モデルは、実験データと統計的に融合することにより、イネにおけるケイ素の吸収を精緻に再現することができるようになった。 作成された数理モデルをもとに、トウモロコシやムギなどとイネの根のケイ素のトランスポーターの配置を比較し、イネの根におけるケイ素トランスポーターの特異的な配置の意義を検証した。その結果、イネの根における二重のカスパリー線が非常に重要な役割を果たしていることを明らかにすることができた。 さらに、上記の研究と平行して、将来的に根からのミネラル吸収に関する数理モデルを融合する予定の作物成長もでるの根幹部分の開発が完了した (Sakurai et al. 2014)。このモデルは、日ごとの気温や降水量などの気象要素をもとに作物の成長をシミュレーションするモデルであり、このモデルにケイ素などのミネラル吸収のモデルを導入することで、更なるモデルの精緻が期待できる。 上記のように、25年度は、研究実施計画の内容である、作物の根におけるケイ素吸収のモデル化と複数の作物のトランスポーター配置の比較について着実に実施できただけでなく、作物成長モデルも完成させた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は、ケイ素の吸収・輸送・蓄積処過程についてのプロセスベースモデルを作成し、ケイ素の作物体内での動態を定量的に明らかにするとともに、トランスポーターの発現制御メカニズムや種間でトランスポーターの配置などが異なる要因などを解析し、また、データ同化によってモデルを精緻化するとともに、不確定要素の確率的推定なども行うことを目的としている。 25年度はイネの根における数理モデルの完成と、イネと他の作物 (トウモロコシやムギ) におけるケイ素トランスポーターの配置を比較することを目的としているが、その目標をほぽ完全に実行できた。 また、それと平行して、将来的にケイ素の吸収・輸送モデルを導入する本体としての作物成長モデルのベースも完成させ、論文化することもできた。上記より、本研究は当所の計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は当所計画の予定通り、以下の項目を実施する。 1. ケイ素の輸送モデルをシュートの部分を含めた形に拡張する。イネの場合、ある程度環境及び品種によって違いはあるものの、バイオマスに占めるケイ素の割合は数パーセントのオーダーに保たれている。どのようなメカニズムがあれば、安定的なケイ素供給・蓄積を保つことができるのか解析する。 2. ケイ素の輸送モデルを複数の根及び葉を持つ形に拡張する。これまでに蓄積された膨大な実験条件とケイ素蓄積量のデータをもとに、データ同化を行い、モデルのパラメータを作物ごとに推定し、モデルの精緻化をはかる。また同時に、モデル選択的手法により、いくつかの仮説的サブモデルを比較し、他のトランスポーターや発現制御因子の必要性について、確率的に解析する。 3. 上記までに得られたモデル構造を解析するプログラムを汎用的なツールとしてパッケージ化する。それにより、例えば別の作物においてトランスポーターが発見され、その配置・極性が明らかになった時、それを迅速に数理モデルに反映させ、ケイ素の作物体内での動態を計算することができるようにする。 4. 上記で作成した汎用ツールを他のミネラル輸送の予測にも応用する枠組みを作成する。
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Research Products
(6 results)