2013 Fiscal Year Annual Research Report
RNA顆粒Pボディーを介した環境応答
Publicly Offered Research
Project Area | Environmental sensing of plants: Signal perception, processing and cellular responses |
Project/Area Number |
25120707
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
渡邊 雄一郎 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (60183125)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 環境応答 / 遺伝子発現制御 / RNA顆粒 / シロイヌナズナ / 高温処理 / RNA分解 / miRNA |
Research Abstract |
発芽3日の植物ではいずれの細胞でも観察されたP-ボディーが,2週間後では多くの細胞でその数が減少するなかで、茎頂および根端分裂組織周辺では数多く存在していた。更に発生が進むと分裂組織でもかろうじて観察できる程度となった。P-ボディーは初期発生で重要な役割を持っていることが示唆された。 昨年度に引き続き、このP-ボディー可視化植物(DCP1:GFP相補体)に環境変化を与え、その動態を観察した。発芽14日後の植物体に高温処理(40℃)を与えたところ、平常の温度(22℃)での植物に比べ、P-ボディーの数、大きさ共に有意に増加した。同様の観察を別のP-body構成因子のDCP2:GFP相補体で行うとDCP1植物の場合と異なり、平常の温度ではあまり顆粒が認められなかった。これまでDCP1とDCP2いずれでもP-ボディーのマーカーとなるといわれてきたが、両マーカーでみえる顆粒状態が異なることが、今年度の解析によって初めて明らかにすることができた。このDCP2:GFP相補体に高温処理を施すとP-ボディーの数、大きさ共に有意に増加した。 それに対して、低温ストレス下(4℃)ではDCP1:GFP顆粒の数、大きさの増大が見られたのに対して、DCP2:GFP顆粒数はむしろ減少する傾向が認められた。ストレスの種類によって構成因子の挙動が異なることを初めて示すことができた。塩ストレスを与えた植物ではコントロール植物と比較して、P-ボディー顆粒数に差はなかったが、大きさのみ増加した。今回、生物学的ストレスとしてバクテリアPseudomonas syringaeの感染による変化としてDCP1:GFPの数の増加を認めることができた。発生過程の一環として種子においてもP-ボディーが存在することを認めた。興味深いことに種子組織内に特定のmiRNAが安定に存在していることも見いだした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
RNA顆粒であるP-ボディーの動態を、種々の環境変化-特に高温処理の前後で観察したところ、思いがけない発見が得られた。観察するためのマーカーとしてDCP1あるいはDCP2いずれを使うかで見える顆粒の状態が異なったのである。これはほ乳類、酵母などほかの真核生物では報告されていないことであり、植物特有の現象をとらえた可能性がある。両者が共存して初めて、予想されるmRNAの分解を介しての環境応答に応じた遺伝子発現制御、つまりあらたな遺伝子セットが発現し、別の遺伝子セットが抑制される図式が成り立つが、実際の細胞内ではより複雑な制御があることが強く示唆された。これは予想外の成果として論文発表を準備しているが、一方で実際の遺伝子発現制御の実態を明らかとする遺伝子プロファイルの解析等が遅れ気味である。 予定以外に研究成果が複数得られている。シロイヌナズナの初期発生において、他のマイクロRNAが合成されない中で、マイクロRNAの一種miR172のみの発現で花芽形成の遅延という表現型がある程度回復した。特定の少数miRNAがあれば発生を進行させる段階があることが初めて明らかとなった。また被子植物の種子のなかで胚発生は休眠状態にあるが、その状態でも長期間保存ののちにも特定のマイクロRNAが安定に保持されていることが明らかとなった。安定化の機構、これらのマイクロRNAの機能は非常に興味ぶかいトピックであり、今後の新たなトピックが生まれた。3'-5' RNA分解酵素Exosomeは真核生物で広く保存されて機能しているが、シロイヌナズナにおけるexosomeの一つのサブユニットRRP44Aの機能低下を人為的に起こさせた植物体を作成し、その作用から環境応答への関与を解析した中で、他の生物でしられているrRNAの前駆体以外に、特定のontologyに属すmRNAを特異的に認識している可能性が強く示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
RNA顆粒として記載されてきたP-ボディーの動態を、機能との関連で記述するために、遺伝子発現のプロファイルの変化を、あたえる環境変化の前後の比較からとらえる必要がある。そのための準備をしたところであるので、実際の解析を26年度に行う。
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[Journal Article] Dual regulation of AUXIN-RESPONSE-FACTOR3 gene expression by AS1-AS2, which maintains the status of DNA methylation, is involved in stabilization of leaf adaxial-abaxial partitioning in Arabidopsis.2013
Author(s)
Iwasaki, M., Takahashi, H., Iwakawa, H., Nakagawa, A., Ishikawa, T., Tanaka, H., Matsumura, Y., Pekker, I., Eshed, Y., Vial-Pradel, S., Ito, T., Watanabe, Y., Ueno, Y., Fukazawa, H., Kojima, S., Machida, Y., Machida, C.
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Journal Title
Development
Volume: 140
Pages: 1958-1969
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] Analyses of Arabidopsis RRP44A. a catalytic center of RNA exosome2014
Author(s)
Kumakura, N., Otsuki, H.,Sato, M., Nomoto, M., Tada, Y., Takeda, A. and Watanabe, Y.
Organizer
第55回日本植物生理学会年会
Place of Presentation
富山県 富山市
Year and Date
20140318-20140320
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