2013 Fiscal Year Annual Research Report
二酸化炭素のセンシングと光合成制御機構の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Environmental sensing of plants: Signal perception, processing and cellular responses |
Project/Area Number |
25120714
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
福澤 秀哉 京都大学, 生命科学研究科, 教授 (30183924)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 光合成 / 二酸化炭素 / センサー / ピレノイド / 輸送体 / 環境 / 葉緑体 / シグナル伝達 |
Research Abstract |
植物におけるCO2の感知・応答反応の理解は、光合成の維持による生存戦略、代謝制御、ひいては物質生産の制御につながる。本研究では、植物が進化の過程で獲得してきたCO2感知・応答システムを理解するモデルとして緑藻クラミドモナスを用い、植物のCO2環境応答の原理と進化的意義を明らかにすることを目的とした。 これまでに、CO2濃縮機構を制御する亜鉛結合タンパク質CCM1とMYB転写因子LCR1が同定したが、CO2シグナル伝達経路の全体像は明らかでない。そこで、新奇なCO2シグナル伝達因子を同定するために、低CO2(LC)条件下で生育が遅延する高CO2(HC)要求性変異株を5株単離し、その表現型を明らかにした(Wang et al. 2014)。形質転換には、新たに開発した高効率エレクトロポレーション法を用いた(Yamano et al., 2013)。ある変異株は野生株と比較してCO2濃縮能が大幅に減少しており、無機炭素輸送体の発現が認められなかった。四分子解析によりDNAタグの挿入とHC要求性の表現型は強く連鎖しており、イオンセンサーをコードする遺伝子にタグが挿入されていた。 LC条件で葉緑体ピレノイド周囲に局在するLCIBは、CO2濃縮機構の維持に必須であり、CO2濃度や光の有無に応答してその局在を変化させる。LC条件でLCIBがピレノイド周囲に集合しない局在異常変異株abl (aberrant LCIB localization)を12株単離し、その表現型を調べた。abl-1とabl-3はLCIBが葉緑体内にスペックル状に拡散するとともにCO2濃縮能が大幅に減少した。 これらの知見から、これらの変異株の変異原因遺伝子を解析することで、CO2センシングと光合成を維持する機構の一端が明らかにされると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
植物におけるCO2の感知・応答反応の理解は、光合成の維持による生存戦略、代謝制御、ひいては物質生産の制御につながる。本研究では、植物が進化の過程で獲得してきたCO2感知・応答システムを理解するモデルとして緑藻クラミドモナスを用い、植物のCO2環境応答の原理と進化的意義を明らかにすることを目的とした。 これまでに、CO2濃縮機構を制御する亜鉛結合タンパク質CCM1とMYB転写因子LCR1が同定したが、CO2シグナル伝達経路の全体像は明らかでない。そこで、新奇なCO2シグナル伝達因子を同定するために、低CO2(LC)条件下で生育が遅延する高CO2(HC)要求性変異株を5株単離し、その表現型を明らかにした(Wang et al. 2014)。形質転換には、新たに開発した高効率エレクトロポレーション法を用いた(Yamano et al., 2013)。ある変異株は野生株と比較してCO2濃縮能が大幅に減少しており、無機炭素輸送体の発現が認められなかった。四分子解析によりDNAタグの挿入とHC要求性の表現型は強く連鎖しており、イオンセンサーをコードする遺伝子にタグが挿入されていた。 LC条件で葉緑体ピレノイド周囲に局在するLCIBは、CO2濃縮機構の維持に必須であり、CO2濃度や光の有無に応答してその局在を変化させる。LC条件でLCIBがピレノイド周囲に集合しない局在異常変異株abl (aberrant LCIB localization)を12株単離し、その表現型を調べた。abl-1とabl-3はLCIBが葉緑体内にスペックル状に拡散するとともにCO2濃縮能が大幅に減少した。 これらの知見から、これらの変異株の変異原因遺伝子を解析することで、CO2センシングと光合成を維持する機構の一端が明らかにされると期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
新たな変異株の単離を進めるとともに、これまでに単離したHC要求性変異株やLCIB局在異常株の変異原因遺伝子を同定する。得られた知見から、(1) CO2センシング・シグナル伝達機構におけるCCM1との関係を明らかにするとともに、(2) 細胞外のCO2に加えて窒素濃度感知と光合成制御機構をつなぐ分子機構の詳細を明らかにする。また、CCM1と複合体を形成するタンパク質や、野生株とccm1変異株を用いたRNA-seq解析から複数のCO2シグナル伝達因子の候補を同定しており、これら因子の機能を推定するために、約60,000株のDNAタグindexライブラリーから、挿入変異株のスクリーニングを進める。
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Research Products
(10 results)