2013 Fiscal Year Annual Research Report
光屈性の生態学的機能を支える分子機構
Publicly Offered Research
Project Area | Environmental sensing of plants: Signal perception, processing and cellular responses |
Project/Area Number |
25120724
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
飯野 盛利 大阪市立大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (50176054)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 環境 / シグナル伝達 / 植物 / 生理学 / 光生物学 |
Research Abstract |
幼葉鞘や胚軸に発現する光屈性は多相的で複雑な光量反応曲線を示すが、イネとシロイヌナズナを用いた研究により、全ての反応成分はphot1を光受容体とし、NPH3/CPT1を必須因子とするシグナル伝達によることが明確になった。本研究では多相的な光量反応曲線が生じる原因を突然変異体を用いるなどして解析し、自然界で発現する光屈性の性質を探る。また、幼葉鞘の光屈性に関与する先端特異的な光応答を、この反応が欠損したイネcpt2突然変異体とその原因遺伝子の配列情報を用いて解析し、その分子基盤を探る。 前年度までのシロイヌナズナ胚軸を用いた研究により、時間依存光屈性の発現にはRPT2が特異的に関与していることを明らかにした。本年度は、イネ幼葉鞘を用いて、青色光で誘発される時間依存光屈性とphot1レベルの関係をウェスタンブロット法で解析した。その結果、時間依存光屈性の発現に有効な照射時間帯において、phot1のリン酸化を反映するバンドシフトが観測された。この反応は時間依存光屈性の発現に有効な低強度の青色光では生じないことから、その機構とは直接的には関係しないと考えられた。一方、30分を越えて照射すると、phot1レベルは徐々に減少することが明らかになった。この反応は、高強度青色光による長時間照射で観測される反応増大(強光への遅延的順応)に寄与していると考えられた。また、phot1のリン酸化(バンドシフト)はphot1の分解に関係していると考えられた。イネの葉緑体運動を定量的に計測する方法を確立し、イネでもphot1が葉緑体集合反応に関与していることを明らかにし、PHOT2-RNAi形質転換体は葉緑体逃避反応を示さないことを明らかにした。幼葉鞘先端特異的な光屈性に関与するCPT2は葉緑体移行シグナルを持つことから葉緑体運動との関係が示唆されたが、葉緑体集合反応には関与しないことが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
CPT2の細胞内発現分布を解析するための形質転換体の作出がうまくいかず、CPT2機能解析の研究が遅れている。その一方、青色光照射下におけるphot1の挙動をウェスタンブロット法で解析することにより、強光下での遅延順応にそのリン酸化と分解が関与しているという新たな知見も得られた。また、イネphot2遺伝子のRNAi形質転換体は正常な光屈性を示すため、phot2は光屈性に関与しないというphot1突然変異体を用いて得た我々の結論と一致したが、RNAiが働いていないという可能性も否定できなかった。今回、葉緑体逃避反応の解析から、作出したRNAiはphot2遺伝子の発現を顕著に抑えていることが明確になった。
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Strategy for Future Research Activity |
光屈性の光量反応曲線に見られる多相性をイネおよびシロイヌナズナの突然変異体・形質転換体を用いて解析した結果を総括し、論文にまとめる。光量反応曲線の多相性の解析でまだ明確になっていな課題をさらに追究する。特に、RPT2が関与する感覚順応の分子機構、光屈性の正・負の決定にも関与するPKSホモログの機能に着目した研究を行う。これまでの研究で多相性の一部に近紫外光が関与していることを明らかになった。phot1を光受容体とする反応に近紫外光がどのように関わっているかを突然変異体・形質転換体を活用して遺伝学的に解析する。さらに、CPT2の細胞内発現分布を解析するための形質転換体を完成させ、イネ幼葉鞘の先端特異的な光受容に関与するCPT2の機能解析を進める。この解析により、イネ科植物が獲得した幼葉鞘先端特異的な機能分化の分子機構の一端を明らかにする。
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Research Products
(1 results)