2013 Fiscal Year Annual Research Report
環境感覚の解明をめざした透過電子顕微鏡法によるオミクス解析
Publicly Offered Research
Project Area | Environmental sensing of plants: Signal perception, processing and cellular responses |
Project/Area Number |
25120727
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
永田 典子 日本女子大学, 理学部, 准教授 (40311352)
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Project Period (FY) |
2013-06-28 – 2015-03-31
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Keywords | 電子顕微鏡 / 葉緑体 / オミクス / シロイヌナズナ / 突然変異体 / 網羅的解析 |
Research Abstract |
本研究は、透過電子顕微鏡を用いて葉緑体形態を網羅的に構造観察することを提案し、2つの目標を掲げた。1つ目は、葉緑体突然変異体の葉緑体構造を電子顕微鏡レベルで網羅的に解析することで、葉緑体構造を構築する遺伝子の法則性を見出し、機能未知の遺伝子機能を予測するモデルを提示することである。2つ目は、細胞や組織全体に渡る広域高解像度の電子顕微鏡画像を取得する方法を開発し、葉緑体の構造変化等を統計学的及び総括的に処理できるようにすることである。 (1) シロイヌナズナ葉緑体突然変異体の網羅的な電子顕微鏡観察 葉緑体タンパク質をコードする核遺伝子に欠損のある突然変異体を収集した。アルビノ・ペールグリーン・斑入りといった葉の色に変化が見られる変異体および見た目の形に異常のある変異体の約100変異体について、色素体の透過電子顕微鏡観察を行った。色素体内部の異常構造は11クラスに分類でき、構造の特徴には共通の機能的傾向が見られた。また、外見からだけでは分からない新規の異常構造も見つかり、変異体のスクリーニング法として電顕が有用であることも示した。 (2) 広域高解像度の電子顕微鏡画像の取得 外部PCから電顕をプログラム制御し電子ビーム方向と試料位置の制御を組み合わせることで、広域の電顕画像を全自動で撮影することに成功した。また、画像認識プログラムにより糊しろ部分を張り合わせることで、大量の画像を全自動で結合することにも成功した。これまでに、最大37,881枚から成り、面積にして約600μm四方の領域をカバーする1枚画像を取得することができた。特に茎頂付近の広域画像から、種々のオルガネラの劇的な分化転換の様子を明らかにすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、2つの目標を掲げて進めてきた。1つ目の目標は、葉緑体構造を構築する遺伝子の法則性を見出し、機能未知の遺伝子機能を予測するモデルを提示することである。解析数は概ね当初の予定数を達成することができた。そこで法則性を見いだすための解析も進めたが、遺伝子機能と構造との間に関係性を見出すことは難しかった。そこで今後は、クロロフィルとチラコイド膜との関係性など他のファクターを含めた情報工学的な解析を進めることにした。2つ目の目標は、細胞や組織全体に渡る広域高解像度の電子顕微鏡画像を取得する方法を開発し、葉緑体の構造変化等を統計学的及び総括的に処理できるようにすることである。こちらは、当初予定していたよりも大幅に広い面積のTEM画像を得ることに成功するとともに、画像からのオルガネラ認識法の開発も進むなど、順調な進展であるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
膨大なシロイヌナズナ変異体リソースはゲノム時代の財産の1つである。これまでに得られた多量のTEM画像を用い、他のオミクス情報との統合をはかっていく予定である。特に、現在も諸説あるチラコイド膜の層状構造とクロロフィルとの関係についての定量的データを得たい。また、光・温度・水・接触などの様々な環境ストレスを与え、植物が環境変化に応じてどのようにオルガネラを分化させるかという環境適応機構について解析を進める。各変異体の色素体の自動分類、広域TEM画像からのオルガネラ自動認識など、情報工学技術との融合をすすめることで、今後TEM画像をバイオインフォマティクス世界に用いる基盤作りを行う。
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Research Products
(5 results)
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[Journal Article] OsATG7 is required for autophagy-dependent lipid metabolism in rice postmeiotic anther development.2014
Author(s)
T. Kurusu, T. Koyano, S. Hanamata, T. Kubo, Y. Noguchi, C. Yagi, N. Nagata, T. Yamamoto, T. Ohnishi, Y. Okazaki, N. Kitahata, D. Ando, M. Ishikawa, S. Wada, A. Miyao, H. Hirochika, H. Shimada, A. Makino, K. Saito, H. Ishida, T. Kinoshita, N. Kurata, K. Kuchitsu
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Journal Title
Autophagy
Volume: 10
Pages: 1-11
DOI
Peer Reviewed
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