2013 Fiscal Year Annual Research Report
セマフォリンシグナルの応答・伝達機構の解明に向けた受容体細胞外領域全長の構造解析
Publicly Offered Research
Project Area | Structural basis of cell-signalling complexes mediating signal perception, transduction and responses |
Project/Area Number |
25121729
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
禾 晃和 横浜市立大学, 生命医科学研究科, 准教授 (40379102)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | シグナル伝達 / 受容体 / X線結晶構造解析 / 糖タンパク質 / 動物細胞発現系 / 構造生物学 |
Research Abstract |
研究代表者は、神経軸索のガイダンス因子として知られるセマフォリンとその受容体プレキシンを対象とした構造研究に取り組んでいる。セマフォリンが伝達するシグナルは、軸索ガイダンス以外にも免疫応答、器官形成、血管新生なども制御することが明らかになっており、その異常は、がんや自己免疫病など多種多様な疾患にも関わることが報告されている。このように医学的に非常に重要な分子であることから、セマフォリン、プレキシンともに精力的な構造研究が展開されており、2010年には代表者のグループも含めて、計3つのグループが異なるサブクラスのセマフォリン・プレキシンの複合体構造を決定している。一連の構造研究から、セマフォリンとプレキシンは、いずれのサブクラスについても2対2のヘテロ4量体構造を形成し、シグナル伝達を行うことが示されているが、サブクラス間の結合選択性がいかにして決定され、また、細胞外における複合体形成が膜の反対側にどのような変化をもたらすかについては未だ不明な点が多い。そこで、本研究では、この結合選択性と受容体活性化の作用機序の解明に向け、さらなる構造解析に取り組んだ。 本年度の研究では、特に結合選択性の解明に関わる結晶学的研究において大きな進展が見られた。これまで構造の明らかになっていなかったサブクラスのセマフォリンとプレキシンのペアそれぞれについて、中程度の分解能ながらも十分モデル構築に用いることができるX線回折データが得られた。いずれについても、ほぼモデル構築は完了しており、今後は複合体解析や構造に基づいた変異体解析などを進めて行きたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
結合選択性の解明に向けた研究については、当初の予想を上回るスピードで研究が進展している。すでに結晶の得られていたセマフォリン分子については、結晶の凍結条件の最適化などの結果、構造解析可能な回折データが得られるようになり、構造解析のステージに達することができた。また、本研究課題において発現系の構築を開始したプレキシン分子についても、動物細胞を用いた安定発現株の構築、高密度培養による大量発現、アフィニティークロマトグラフィーによる精製、結晶化という各段階を順調に進めることができ、3.6Åという中程度の分解能ながらも構造決定可能な回折データが得られた。分子置換法による位相決定も行い、モデル構築もほぼ完了した状態にある。 一方、受容体細胞外領域の長鎖の断片の発現と結晶化については、糖鎖除去変異体の作製を進めており、一部の変異体については、大量発現を行うため、安定発現株の構築に取り組んだ。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究で、単独構造の決定に成功したセマフォリンとプレキシンのペアに関しては、2者を混合し、共結晶化に取り組む予定である。また、2者の相互作用は非常に弱いことも分かっており、超遠心分析を利用した相互作用解析を行うことで、親和性の定量化も行うことを計画している。複合体構造の決定の後は、外部研究者との共同研究によってプレキシン発現細胞を用いた変異体解析を行うことで、セマフォリンとプレキシンの結合選択性を決定している領域の同定を進めて行きたい。 また、プレキシン細胞外領域の長鎖の断片については、本年度に構築した安定発現株を用い、順次、高密度培養や精製に取り組み、単独状態およびセマフォリンとの複合体の状態での結晶化に取り組んでいきたいと考えている。
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