2013 Fiscal Year Annual Research Report
止血血栓形成に関わる複合体プロテアーゼの構造生物学的研究
Publicly Offered Research
Project Area | Structural basis of cell-signalling complexes mediating signal perception, transduction and responses |
Project/Area Number |
25121745
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
武田 壮一 独立行政法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (80332279)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | プロテアーゼ / 血栓 / 構造生物学 / X線結晶構造解析 / 蛋白質複合体 / 血液凝固 / シグナル伝達 / トロンビン |
Research Abstract |
本研究では血栓形成、止血機構に働くプロテアーゼとその阻害および調節機構を担うタンパク質群に焦点を当て、構造生物学的視点からプロテオリシスが関与するシグナル伝達機構を明らかにすることを目指す。正常な血栓形成、止血機構の破綻は心筋梗塞や脳梗塞に繋がる重篤な血栓症を引き起こすため、制御機構の本質的な理解は医学的にも非常に重要な課題である。本研究では止血血栓形成に関わるプロテアーゼ、特に血栓形成の要となるトロンビンを産生する酵素、Factor Va (FVa)とFactor Xa (FXa)からなる分子量約300kDaのプロトロンビナーゼ複合体(FVa/FXa複合体)を主な研究対象とする。本年度は既に先行研究を進めていたオーストラリア産コブラ科ブラウンスネーク(Pseudonaja texili)由来プロトロンビナーゼ複合体(Pseutarin-C)から得られた結晶の改良に取り組んだ。結晶の改良策として、分子の不均一性の排除を目的として、各種のグリコシダーゼ処理による糖鎖除去を行った。また、リジン残基の還元メチル化等の分子表面構造を変え、結晶のパッキングの改良も試みた。様々な分子改良の試みにより、結晶化の再現性、大きさの改良がなされたが、残念ながら現在得られている結晶の到達分解能は7.6Å程度(BL44XU)と構造解析に適さないことが判明した。結晶の改良を進めている折、他の研究グループより、Pseutarin-Cの部分分子の結晶構造が報告された(Blood. 2013 Oct 17;122(16):2777-83.)。そこで、Pseutarin-Cの結晶の改良を一旦保留し、不活性型のFactor X(FX)が活性化に伴ってFVaに結合するメカニズムに焦点を当て、FXの結晶構造を解明すべく、昆虫細胞を用いたヒトFXの発現系の構築を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究計画では当該年度中に構造解析可能なPseutarin-Cの結晶を得ることを目標と据えていたが、当初予定していたタンパク質レベルの方法のみでは十分な結晶の改良が難しいことが判明した。さらに、海外の研究グループが先行してリコンビナントPseutarin-Cの部分構造を報告したため、蛇毒由来の全体分子の構造解析を続ける意義が薄れてしまった。そこで、研究の焦点を少し変え、新たに昆虫細胞を用いたリコンビナントFXの発現系の立ち上げを進めている。このため、当初計画より遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
上述したように、Pseutarin-Cについては他の研究グループが先行して部分結晶構造を報告したため、このサブテーマについては一旦保留することにする。その代わりにFXの活性化に伴う構造変化に焦点を絞った研究を進める。活性化型FXaについては数多くの結晶構造が報告されているが、不活性型FXの結晶構造は知られていない。プロトロンビン・トロンビン、FV・FVaなどの不活性型・活性型の構造比較から表面構造の変化が、分子会合状態の変化の鍵となることが示されている。プロトロンビナーゼ複合体形成メカニズムを知る上でFXの構造と構造変化の詳細を知ることは重要であり、そのためにまずヒトFXの発現系を昆虫細胞・バキュロウィルスを用いた系で構築し、結晶構造解析を進める計画である。
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