2013 Fiscal Year Annual Research Report
クロトーの、グルクロン酸糖鎖およびFGF23との複合体としての構造解析
Publicly Offered Research
Project Area | Structural basis of cell-signalling complexes mediating signal perception, transduction and responses |
Project/Area Number |
25121747
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | Foundation for Biomedical Research and Innovation |
Principal Investigator |
前田 良太 公益財団法人先端医療振興財団, その他部局等, 主任研究員 (50432399)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 翻訳後糖鎖修飾 / 繊維芽細胞増殖因子FGFシグナル / ビタミンD合成酵素 / 硫酸化グルクロン酸含有糖鎖 / ほ乳動物培養細胞 / 多コピー遺伝子発現 / リン酸カルシウムイオン / エックス線結晶構造解析 |
Research Abstract |
ビタミンDの合成を制御するホルモンである、繊維芽細胞増殖因子はアルファークロトータンパク質の介在によって繊維芽細胞増殖因子受容体にシグナルを伝える。この受容体は体の多くの細胞に発現しているのに対し、アルファークロトータンパク質は腎臓の尿細管細胞にのみ発現しているため、繊維芽細胞増殖因子のシグナルはこの尿細管細胞にのみ伝わり、結果としてビタミンDの合成酵素の発現を抑える。そのため、これらの三つの分子(繊維芽細胞増殖因子、アルファークロトータンパク質、繊維芽細胞増殖因子受容体)は、医学的に重要な分子複合体として広く認識されている。 そこで、いったいどのようにして繊維芽細胞増殖因子はアルファークロトータンパク質に認識され、受容体を活性化するのだろうか。この問いに答えるために、まずアルファークロトータンパク質の構造を知ることから研究を始めた。そして、哺乳動物細胞で組み替えタンパク質を大量に発現させる技術によって、アルファークロトータンパク質を結晶化することができた。本研究課題を始める前の段階では、ヒトのアルファークロトータンパク質の結晶化をおこなっていた。しかしながら、その後の解析により、目的としていた解像度が得られないことが分かった。そこで、より高い解像度が得られる結晶を得るために、次々と結晶の最適化を行った。その結果、よりよい解像度を与える結晶が得られ、最終的に2.3オングストロームでの結晶構造解析に成功した。 ついで、アルファークロトータンパク質と結合する糖鎖および繊維芽細胞増殖因子の部分ドメインとの共結晶化をおこなっている。これらの複合体分子解析により、シグナル伝達の仕組みを明らかにすることを進めていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では、アルファークロトータンパク質の結晶構造解析を3-3.5オングストローム程度の解像度でおこなう予定であった。しかしながら、研究を進めていくうちに、偶然ではあるが、ほ乳動物細胞を用いた高発現系の構築に成功した。この方法は、免疫イムノグロブリンを発現、産生するために用いられている方法であるが、エックス線結晶構造解析には未だに用いられている例はなかった。どのような培養細胞でも原理的には応用が可能であり、実際にアルファークロトータンパク質や繊維芽細胞増殖因子に対して、適用してみたところ、十分な生理活性を持つ各タンパク質が、結晶構造解析に十分な量(数ミリグラム)発現させることができた。研究計画には予定していなかったが、この成果を論文としてまとめ、発表した。 さらに、ほ乳動物細胞を用いてタンパク質を発現させた場合、多くのタンパク質で不均一な糖鎖修飾を受けることがある。この不均一性は糖鎖の最も外側にあるシアル酸の不均一性に起因するものである。そこで、シアル酸分解酵素を精製タンパク質に反応させて、糖鎖の不均一性をできるだけそろえることで、結晶化解析をおこなった。すると、期待した以上に結晶化の効率が上がり、さらには、多くの場合、結晶の形にも変化が見られた。これまでどうしても高分解能を与えることができなかったアルファークロトータンパク質の結晶でも、最終的に2.3オングストロームでの解像度での構造解析をすることに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
3オングストローム以下の高分解能をあたえるアルファークロトータンパク質の結晶を、再現性よく作成することができている。そのため、これらの結晶を用いて、アルファークロトータンパク質と結合することが知られているいくつかの結合分子を外から加える(結晶ソーキング法)ことで、アルファークロトータンパク質の分子認識機構について明らかにしていきたい。ひとつは、3位のヒドロキシル基が硫酸化されているグルクロン酸糖がNアセチルガラクトサミンにベータ1→3結合した二糖を有機合成したものであり、もうひとつは、繊維芽細胞増殖因子のC末端ドメイン付近からなる26アミノ酸残基のペプチドである。 これらはいずれも、生化学的な解析から、アルファークロトータンパク質と直接結合することが確かめられており、その結合定数や解離速度が求められている。そのため、結晶ソーキング法に用いる際の条件(濃度、pH、反応時間)を最適化する際の指標が得られている。 しかしながら、これらの方法でうまくいかない場合には、合成した二糖とペプチドをあらかじめアルファークロトータンパク質と結合させたままの形で共結晶化をおこなう。そのさいには、これらの共複合体の結晶化条件のスクリーニングから始める。また、アルファークロトータンパク質の結晶が高い分解能を示す条件が求められているため、その条件に基づいて、複合体分子の結晶化条件の最適化をおこなう。これらの解析結果に基づいて、どのようにタンパク質が糖鎖を認識しているのか、どのように共受容体がホルモン認識して、受容体にシグナルを伝えているのか、その構造学的理解に迫りたい。
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Research Products
(23 results)