2013 Fiscal Year Annual Research Report
CK1を介した減数第一分裂期における染色体分配制御機構の解析
Publicly Offered Research
Project Area | Systematic study of chromosome adaptation |
Project/Area Number |
25125706
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
作野 剛士 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 講師 (10504566)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 減数分裂期組換え / カゼインキナーゼ / コヒーシン / 分裂酵母 |
Research Abstract |
申請者は、分裂酵母I型カゼインキナーゼ(CK1)が減数第一分裂期における染色体分配制御に必須な役割を果たしていることをこれまでに見いだしていた。その後の解析から、CK1は減数分裂期組換え反応の制御を担う可能性が示唆されていた。そこで申請者は、CK1を介した減数分裂期組換え反応制御の分子機構を解析した。 まず申請者はキナーゼであるCK1が減数分裂期組換え制御を担う上で鍵となる標的リン酸化因子を探索した。その結果、コヒーシンの減数分裂期特異的なサブユニットの一つであるRec11のN末端部分がCK1によってリン酸化されることが明らかになった。次にそのリン酸化残基を同定し、非リン酸化型変異株(rec11-A)の表現型を解析した結果、CK1変異株やrec11破壊株と同程度の組換え欠損を示すと共に、リン酸化模倣型変異株はCK1変異株における組換え欠損を有意に抑圧した。さらに、rec11-A変異株およびCK1変異株では、組換え反応の端緒となるDNA二重鎖切断導入に必要なLinear Element(LE)と呼ばれる軸構造を形成する因子群のクロマチン局在が失われることも明らかになった。上記の結果から、減数分裂期組換え反応はCK1によるRec11のリン酸化をきっかけとして、LE因子の染色体軸への局在が促されることで開始されるという機構が示唆される。 コヒーシンの減数分裂期特異的なサブユニットであるRec8とRec11はその名が示す通り、組換え(RECombination)に必要な因子として単離されてきた。しかし、それらが如何にして組換えを制御するのか、その分子機構は長年不明であったが、本研究を通じてその分子機構の実態が明らかになろうとしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者は、CK1を介した減数分裂期組換え反応制御の分子機構の解明を目的に研究を行った結果、キナーゼであるCK1を介した減数分裂期組換え反応制御の標的リン酸化因子としてコヒーシンの減数分裂期特異的なサブユニットの一つであるRec11を同定した。さらに、その標的残基の決定、および非リン酸化型変異株とリン酸化模倣型変異株の解析を通じて、実際に細胞内でそのリン酸化がCK1によって担われ、CK1変異による生じる組換え欠損の原因であることを突き止めた。さらに、rec11非リン酸化型変異株およびCK1変異株では、組換え反応の端緒となるDNA二重鎖切断導入に必要なLinear Element(LE)と呼ばれる軸構造を形成する因子群のクロマチン局在が失われることも判明したことから、Rec11のリン酸化がLE因子のクロマチン局在を保証することでDNA二重鎖切断とそれと共役した組換え反応を制御するという、CK1を介した減数分裂期組換え反応制御の分子的基盤が明らかになりつつある。 上記解析結果は、当初目的であったCK1を介した減数分裂期組換え反応制御の分子機構の解明に迫るものであると共に、組換え(RECombination)に必要な因子として単離されてきたコヒーシンの減数分裂期特異的なサブユニットであるRec11が如何にして組換えを制御するのか、長年謎であったその分子機構の実態が、本研究結果から明らかになろうとしている。よって、本研究結果はCK1を介した減数分裂期組換え反応制御の分子機構の解明という点で十分な進捗が得られただけでなく、減数分裂期組換え反応制御の全体像の理解という基礎生物学的に重要な問題の解明に迫る知見を与えられた点においても意義深いといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの解析結果から、rec11非リン酸化型変異株およびCK1変異株では、組換え反応の端緒となるDNA二重鎖切断導入に必要なLinear Element(LE)と呼ばれる軸構造を形成する因子群のクロマチン局在が失われるが明らかになったが、ではなぜRec11のリン酸化がLE因子の局在および軸構造形成に必要ななのか、その分子機構を明らかにすることを今後の解析の主眼とする。具体的には、LE因子はRec10, Rec25, Rec27, Hop1およびMug20の5者によって形成されていることが知られている。そこでLE因子の中でRec11のCK1によるリン酸化依存的にRec11との結合が制御される因子が存在すると仮定し、2-hybird法やin vitro binding assayを通じてその可能性を検証する。また、Rec11をbaitとした2-hybrid screeningはRec11の免疫沈降実験を通じてRec11とLE因子との橋渡しを担う因子の網羅的探索を行う。 CK1とコヒーシンの減数分裂期特異的なサブユニットであるRec11は進化的に保存されており、マウスにもそのホモログが共に存在する。今後は、上記解析に加えて、本研究結果から判明したCK1によるRec11コヒーシンのリン酸化を介した減数分裂期組換え反応の制御機構が高等真核生物、特にマウスにおいて保存されているのかについても解析を行うべく計画中である。
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Research Products
(5 results)