2013 Fiscal Year Annual Research Report
新型シーケンサーを用いた細菌における自然環境でのゲノムアダプテーション解析法
Publicly Offered Research
Project Area | Systematic study of chromosome adaptation |
Project/Area Number |
25125718
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
小椋 義俊 宮崎大学, フロンティア科学実験総合センター, 助教 (40363585)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 腸管出血性大腸菌 / 結核菌 / ゲノム / 進化 / 病原性 |
Research Abstract |
細菌が自然環境下で様々な環境や宿主等の変化に適応して、そのクローンを拡大する(clonal expansion)ためには、外来性遺伝子の獲得だけでなく、塩基置換や塩基の挿入・欠失などの微細なゲノム変化も、ゲノムアダプテーションという点で重要な役割を果たす。本研究では、疫学・臨床情報が完備された病原性大腸菌O26(500株)と結核菌(100株)をモデルとして、大規模配列解析による高解像度進化系統樹の作製と各株のメタ情報との統合解析を行い、病原細菌におけるゲノムアダプテーションの解析手法の確立を目指す。 これまでに、本新学術領域の公募研究(H23-24年度)において、約350株のO26ヒト臨床由来株の収集とシーケンスを終えている。本年度は動物衛生研究所、地方動物保健所、地方衛生研究所などの協力を得て、ウシ糞便由来O26を36株収集した。また、動物診療所の協力を得て、ウシの直腸便400検体を収集し、7株のO26(うち2株が志賀毒素陽性)を分離した。これらのウシ由来O26について、MiSeqによりゲノムシーケンスを行い、ヒト由来株を含めた配列解析を行っているところである。全ゲノムレベルの高解像度系統解析の結果、国内のO26は大小2つの主要系統群を構成することがわかった。本主要系統群は日本の環境に適応し、そのクローンを増大させていると考えられることから、本ゲノムアダプテーションに関わるゲノム領域の抽出を目指して、各主要系統群に特異的なゲノム領域(変異)の同定を進めている。また、結核菌については、これまでに老人ホーム集団発生由来の8株についてシーケンスと一部の解析までを終えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ウシ由来株O26の収集については、当初予定していた150株には達していない。動物衛生研究所に加え各地の地方動物保健所や地方衛生研究所に問い合わせているが現在までに収集できたのは36株にとどまっている。ウシのO26の保菌率は数パーセントと言われており、今回400検体のウシ糞便から7株のO26を分離したが、割合から考えて、分離手法には問題ないと考えられる。今後は、さらに多くの糞便検体を収集し、O26の分離を進める予定である。配列解析については、順調に進んでおり、全ゲノム系統解析のパイプラインは完成している。現在、主要系統群特異的なゲノム領域と変異を抽出する解析系の構築を進めている。結核菌については、生育速度が非常に遅いことと、国内外の競合研究との関係から菌株の再選別が必要となったため、少し遅れているが次年度には100株の解析を終える予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、ウシ由来O26の収集と分離をさらに進める予定である。これまでの予備的な結果では、ヒト由来臨床株とウシ由来環境株に系統的な違いは見られず、ウシに存在するO26の大部分が基本的にはヒトへの病原性を保持していることが示唆される。本仮説の学術的信頼性を得るためには、少なくとも100株程度のウシ由来株を解析に加える必要があると思われるため、次年度中に目標数の分離・収集を目指す。また、本年度の解析により同定した2つの主要系統群に特異的なゲノム領域や変異を同定し、ゲノムアダプテーションに関わる遺伝子やその変異を明らかにする。将来的には本研究で確立した解析手法を用いて、O157を含む他の重要な血清型の腸管出血性大腸菌についても同様の解析を行う予定である。結核菌については、研究期間中に100株のシーケンスと解析を終わらせる予定である。O26の研究については、研究期間内に論文投稿するつもりである。
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