2013 Fiscal Year Annual Research Report
脂肪蓄積を制御する新規エピゲノム制御機構の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Molecular Basis and Disorders of Control of Apetite and Fat Accumulation |
Project/Area Number |
25126704
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
稲垣 毅 東京大学, 先端科学技術研究センター, 特任准教授 (10507825)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | エピゲノム / 脂肪細胞分化 / 糖脂質代謝 / Fbxl10 / 肥満 |
Research Abstract |
エピゲノム制御因子の一つであるFbxl10はヒストン脱メチル化酵素として知られているが、我々はJmjC ドメインをもたないアイソフォームであるFbxl10-2が脂肪細胞分化の過程で過剰発現し、脂肪細胞分化に影響を及ぼすことを発見した。この基礎データをもとに、Fbxl10がヒストン脱メチル化能を介さずに制御する遺伝子発現と代謝、脂肪細胞分化について、マウスと細胞系を用いて検討することとして、本年度はおもにマウスを用いた検討を行った。実験開始に当たり、新規に樹立したFbxl10-2ノックアウトマウスをBL6バックグラウンドマウスと交配したところ、メンデルの法則に比してノックアウトマウスの得られる率が低かったため、人工授精を行ってヘテロマウスを得たのちに、さらに人工授精を繰り返して必要なマウス数(オス、N=5)を得ることができた。この生残率に関しては129/svバックグラウンドマウスに戻し交配した場合の繁殖ではほぼメンデルの法則に従っていたため、バックグラウンドの寄与が大きいと考えられた。得られたオスのノックアウトマウスは小型で、血中のグルコース濃度、コレステロール濃度、中性脂肪濃度が低値であったことから、Fbxl10がin vivoにおける代謝調節に関与していることが示された。また、マウスにおけるFbxl10-2の発現様式について検討したところ、長期に脂肪食負荷した野生型マウスやOb/Ob肥満マウスモデルの白色脂肪組織において対照群と比較して発現増強を認めた一方、短期間の絶食や脂肪食の再摂食では発現が増強しなかった。これらの結果から、Fbxl10-2が長期の高脂肪食暴露による発現調節を受けて糖脂質代謝を制御するエピゲノム因子であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた野生型マウスを用いたFbxl10-2の発現様式の検討をおこない、さらに新規のFbxl10-2ノックアウトマウスについて産仔を得ることに成功した。産仔を得るに当たっては想定以上の苦労を要したが、人工授精を繰り返して実験に十分な産仔を得た。これらのマウスを用いた成長曲線や血清プロファイリングの結果が得られており、概ね予定通りに進行していると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の結果、ヒストン脱メチル化を介さないFbxl10によるエピゲノム制御がin vivoにおいて糖脂質代謝に関与することが明らかになったため、今後はin vitroの系(3T3-L1脂肪細)をもちいて詳細な遺伝子制御機構と脂肪細胞分化への影響を検討することとする。標的遺伝子の解析と転写制御機構についてマイクロアレイ法、RT-qPCR法、ChIPシークエンス法などを駆使して行うこととする。ChIPシークエンス法に関しては使用抗体によっては免疫沈降が困難な場合が想定される。その為、クロスリンクや免疫沈降法(抗体やビーズ、標的の断片化の方法など)について詳細な条件の検討を行う。
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