2013 Fiscal Year Annual Research Report
モデルマウスを用いた新規摂食・脂肪蓄積調節遺伝子の機能解明
Publicly Offered Research
Project Area | Molecular Basis and Disorders of Control of Apetite and Fat Accumulation |
Project/Area Number |
25126727
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
高田 豊行 国立遺伝学研究所, 系統生物研究センター, 助教 (20356257)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 肥満 / 過食 / マウス |
Research Abstract |
本研究は、汎用マウス系統のB6を遺伝的背景にして、日本産野生由来MSM系統の染色体13番端末を置換するだけで、過食/肥満の表現型を示す系統(以降C13Tと表記)を使用して、申請者らが遺伝解析から同定した機能未知の候補遺伝子を対象に、その機能、ならびに遺伝子の変異による遺伝子産物の機能変化が過食および肥満に繋がるメカニズムについて調査している。C13T以外にも、候補遺伝子を遺伝子改変により破壊した動物(以降KOマウスと表記)も用い、これが原因で発症すると考えられる2型糖尿病や関連病態との関連も検討している。これによりC13TおよびKOマウスが、ヒト摂食および脂肪蓄積研究のモデルとして有効か否かについて検討している。これまでの解析から、標記の遺伝子をノーザンブロットや定量PCRにより解析し、遺伝子が脳で発現することを確認した。また、KOアリルが遺伝子発現部位でLacZを発現するので、この染色により、脳の免疫組織学的な観察による発現細胞の確認を行った。すなわち、LacZレポーター発現マウスの脳より組織切片を作製し、脳の細胞種特異的に発現するタンパク質の抗体を用いた観察を行った。標記遺伝子のKOマウスを作成するためのfounder系統、および米国JAX研究所:The Jackson Laboratory Cre Repository (http://cre.jax.org/)より導入した神経細胞で発現する遺伝子の組織得意的破壊が可能なCreマウスによる交配を開始した。C13TおよびKOマウスが、ヒト摂食および脂肪蓄積研究のモデルとして有効か否かについて検討するため、高脂肪食付加下での耐糖能やインスリン抵抗性を観察するため、腹腔内ブドウ糖負荷試験(ipGTT)、インスリン負荷試験(ITT)呼気測定等によるデータの収集を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、候補遺伝子のKOマウスを得ることができたので、野生型およびF1(KOマウス/野生型)個体について表現型収集を行うことができた。本研究が候補としている遺伝子は選択的スプライシングフォームが報告されており、C13Tの組織で はいくつかのスプライスフォームが発現している可能性があるが、KOマウスは報告されているスプライスフォームに共通のエクソンを欠損させることができるためNull型の表現型を観察できるものと期待できる。体重測定と食餌量調査については、通常エサで30週、高脂肪エサ(HFD )による10週程度を目標におこなった。通常エサおよびHFDに加えて、高ショ糖付加エサによる体重測定と食餌量調査を行った。制限摂餌についても行った。また、解剖学的観察、血液生化学による表現型収集に加えて、呼気測定によるエネルギー代謝の観察を開始した。高脂肪食付加下での耐糖能やインスリン抵抗性をipGTT、ITTにより測定した。さらに、病態との関連を調査するための表現型観察の調査についても行った。これ以外にも、候補遺伝子が発現する可能性の高い細胞を脳の組織学的観察から確認することができた。レポータ遺伝子を発現する遺伝子改変マウス作製に関して、現在、遺伝子改変動物作製に格段の技術革新をもたらしているCRISPR-Cas9システムも導入して動物作製を行うための準備を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度に行った免疫組織学的な観察により、目的とする遺伝子が神経細胞で発現している可能性が高くなったので、標記遺伝子のKOマウスを作成するためのfounder系統、および米国JAX研究所:The Jackson Laboratory Cre Repository (http://cre.jax.org/)より導入したCreマウスによる交配により、神経細胞で発現する遺伝子の組織特異的破壊を行い、高脂肪食付加や各種の条件下でのエネルギー代謝、耐糖能、インスリン抵抗性などに関連した表現型をipGTT、ITT、呼気測定等により測定する。C13T、KOマウス、組織特異的KOマウスについて、各種条件下における体重測定、食餌量調査、解剖学的観察、血液生化学、エネルギー代謝関連の表現型収集を継続して行う。本研究が候補としている遺伝子は選択的スプライシングフォームが報告されているので、C13TおよびKOマウスで発現しているスプライスフォームの違いを検出し、表現型差について検討する。候補遺伝子が発現する可能性の高い細胞を脳の組織学的観察から確認することができたが、あくまでもレポーター遺伝子の発現を指標に行っているため、in situやこれ以外の手法で遺伝子発現細胞を同定する。これについては、遺伝子に含まれる配列やスプライシングフォームの問題、さらにはタンパク質ドメインの種類による抗体作製の困難が存在するが、領域内外の支援により解決したい。レポータ遺伝子を発現する遺伝子改変マウス作製に関して、遺伝子改変動物作製に格段の技術革新をもたらしているCRISPR-Cas9システムも導入して改変型レポータ遺伝子を発現する動物作製を行う。最後に、脳部位の網羅的遺伝子発現解析により相互作用因子の探索についても行いたい。
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