2013 Fiscal Year Annual Research Report
ソシオゲノムの進化:カースト分化を規定する遺伝子群の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Genetic bases for the evolution of complex adaptive traits |
Project/Area Number |
25128705
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
前川 清人 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 准教授 (20345557)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 発生・分化 / 昆虫 / 進化 / 遺伝子 / 生理学 |
Research Abstract |
動物には,極めて高度な社会性を獲得したグループが存在する。その代表例である社会性昆虫がもつゲノム(=ソシオゲノム)には,複数の表現型(カースト)の設計図が織り込まれており,個体としての表現型が協調して「コロニーという総体」を作り上げる設計図をも織り込まれている点が特筆に値する。特にシロアリでは,各カーストの役割や形態が特殊化しているため,コロニーから各カーストを切り離して維持することは不可能である。したがって進化の過程では,各カーストを特徴づける形質と,協調や分業をもたらす複数の因子がほぼ同時に獲得されたと考えられる。本研究は,カースト分化を規定する未知の因子群を明らかにすることを目指し,兵隊・ワーカー・生殖カーストへの分化前の個体の特定に成功したヤマトシロアリReticulitermes speratusに注目する。本年度はまず,網羅的なトランスクリプトーム解析(RNA-seq)を行うためのライブラリーを作製した。各カーストの分化誘導過程において,ガットパージ(昆虫の脱皮前に生じる腸内容物の放出)を指標として,(1) 分化前,(2) ガットパージ直前,(3) ガットパージ中,(4) 分化後,の各個体を10頭ずつ回収した。異なるコロニーに由来するトリプリケートを用意し,頭部と胸腹部に分けた計72ライブラリーの作製が完了した。さらに,新学術領域研究「ゲノム支援」のサポートを受けて,本種の新規ゲノム解読にも着手した。ペアエンドライブラリー(250と800bp)およびメイトペアライブラリー(3k, 5k, 8k, 10k)の作製とシーケンスが完了し,順調に解析が進行している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画になかった本種の新規ゲノム解読を,新学術領域研究「ゲノム支援」のサポートにより着手することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
作製したライブラリーのシーケンスが完了し次第,ゲノムをフレームとしたRNAseq解析を遂行し,各カースト分化時に働く遺伝子群を詳細にリストアップする。各候補遺伝子の遺伝子重複の有無や程度を明らかにしながら,各遺伝子のco-option の詳細な検討や,アイソフォームの特定および機能解析を進める。本計画の最終年度のため,成果を取り纏めてハイグレードなジャーナルを目指した論文執筆も進める。
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