2013 Fiscal Year Annual Research Report
大腸菌の進化実験による複合適応形質の進化過程の解析
Publicly Offered Research
Project Area | Genetic bases for the evolution of complex adaptive traits |
Project/Area Number |
25128715
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
古澤 力 独立行政法人理化学研究所, 生命システム研究センター, チームリーダー (00372631)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 抗生物質耐性 / 大腸菌 / 進化実験 |
Research Abstract |
本研究は、複合適応形質の進化において、ゲノム変異に依らない表現型のメモリー機構が重要な役割を果たすという仮説を立て、それを検証することを目的とする。この仮説は、研究代表者による大腸菌の進化実験によって示唆されたものであるが、その分子機構は不明な点が残されており、また複合適応形質の進化との関係も明確にはなっていない。そこで本研究では、自動培養システムを用いた変動する環境下での大腸菌の進化実験を用いて、ゲノム変異に依らない表現型のメモリー機構がどのような安定性を持つかを解析し、表現型の変化とエピジェネティクス機構との関係を分析することによって、その分子機構へ迫ることを試みる。 本年度は、これまでの研究で得られた抗生物質耐性株の表現型・遺伝子型の変化がどのように耐性獲得と相関しているかの解析を行った。マイクロアレイによる網羅的発現解析の結果と薬剤耐性能の関係を理解するために、簡単な数理モデルを用いて遺伝子発現量から薬剤耐性能を予測するシステムを構築し、結果として数個の遺伝子の発現量によって高い精度で様々な薬剤への耐性能を予測することに成功した。また、ゲノム変異と耐性能の対応を解析し、一部の薬剤についてはゲノムの配列は変化していないにもかかわらず、耐性能が獲得され得ることを示した。さらに、この変異に依らない耐性獲得の分子機構を理解するために、いくつかの遺伝子の破壊株を用いた進化実験を行い、破壊することによって耐性獲得が阻害される遺伝子群の同定を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに得られた抗生物質耐性の大腸菌株について、その表現型と遺伝子型の網羅的解解析から、ゲノム変異に依らない耐性獲得のダイナミクスが存在することを示すことに成功した。また、遺伝子破壊株を用いた進化実験の系の立ち上げも順調に進んでおり、研究全体としておおむね順調に進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
さまざまな遺伝子の破壊株を用いた進化実験を行い、破壊することによって抗生物質耐性能の獲得が阻害される遺伝子のスクリーニングを行う。大腸菌のエピジェネティクスがゲノム変異に依らない耐性獲得に寄与しているとの仮説をたて、ChIP-Seqなどの手法によってその仮説を検証する。網羅的解析と進化実験を統合することにより、生物システムの柔軟な環境適応ダイナミクスの理解を目指す。
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