2013 Fiscal Year Annual Research Report
広汎性発達障害を合併した弧発例統合失調症のパーソナルゲノム解析
Publicly Offered Research
Project Area | Personal genome-based initiatives toward understanding bran diseases |
Project/Area Number |
25129704
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
安田 由華 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任研究員 (20448062)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 広汎性発達障害 / コピー数多型(CNV) / 神経科学 / パーソナルゲノム解析 / 統合失調症 / 中間表現型 / 精神神経学 / 一塩基多型(SNP) |
Research Abstract |
統合失調症は、幻覚妄想、意欲低下、認知機能障害が認められ、社会的機能の低下を呈する精神疾患である。統合失調症は80%の高い遺伝率の多因子遺伝疾患である。一方、広汎性発達障害は対人的な相互作用における質的な障害、コミュニケーションの質的な障害、限定された反復的で常同的な行動・興味・活動を特徴とする精神疾患である。同様に、広汎性発達障害も90%という高い遺伝率の多因子遺伝疾患である。近年、両疾患のゲノム研究において、一塩基多型(SNP)や数Mbの広範囲にわたるゲノム領域の欠失や重複であるコピー数多型(CNV)を全ゲノムにわたり比較する関連解析が行われている。特にCNV解析において、各疾患でいくつかの稀なCNVが健常者と比べ多いことが報告され、両疾患で一部重複領域におけるCNVが関連している。また、両疾患は2-3%において併存することが知られている。一般人口にも5%以上の頻度で存在するCommonなSNPは、疾患に与える効果は小さく、いくつかのSNPの効果が集積することで疾患の病態に関与すると考えられる。それに対して、CNVやエクソン内のアミノ酸置換を伴う非同義SNP、ストップコドンとなるSNP、フレームシフトを起こすSNP、プロモーター領域にあり遺伝子発現に影響を与えるSNPなどは、遺伝子発現や疾患に対するエフェクトサイズが比較的大きいと考えられる。また、効果の大きい遺伝子多型は比較的少ないサンプル数でも検出できると考えられる。そこで、本研究では、広汎性発達障害を合併した統合失調症という特殊で稀なサンプルを用いて、次世代シークエンサーによる全ゲノム解析を行い、稀なmutationを見いだすことに焦点を置いた解析を行う。本研究により、統合失調症や広汎性発達障害の分子遺伝学的基盤を明らかとなり、疾患の予防、早期診断、早期介入および治療に役立ち、意義深いと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
統合失調症を合併した広汎性発達障害のトリオ1家系と、広汎性発達障害の孤発例のトリオ9家系の合計10家系について、CNV解析および、サンガーシークエンスによる変異の確認を行った。その結果、広汎性発達障害10例中、7例において、 de novo SNVのナンセンス変異とミスセンス変異が見出された。7例におけるde novo SNVのナンセンス変異とミスセンス変異の合計は、9個であり、一例あたりの平均値は、1.3個であった。見出された変異のうち、OBSC、PCNX、PEAK1などの有力な原因遺伝子の候補が認められており、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、統合失調症を合併した広汎性発達障害の、希少なトリオサンプルおよび、広汎性発達障害孤発例のトリオについて、次世代シークエンサーによる全ゲノムの塩基配列の解析に基づき、遺伝子変異(mutation)を網羅的に検索した。そこで検索したmutationの内、CNVやエクソン内のアミノ酸置換を伴う非同義SNP、ストップコドンとなるSNP、フレームシフトを起こすSNPなど、比較的効果の大きいmutationを同定した。これらの見出した変異について、サンガーシークエンスによる変異の同定、及び、神経細胞を用いた神経系における発現解析を行った。その結果、OBSC,PCNX,PEAK1など、10例中7例に変異が見出された。これらは、他のコホートにける、広汎性発達障害患者において報告されたものや、我々のコホートのうち、2家系のトリオにおいて、共通して認められたものである。したがって、これらの遺伝子は、非常に有力な原因遺伝子の候補であると考えられる。今後は、合併例、統合失調症患者、広汎性発達障害患者、健常者由来のリンパ芽球サンプルを用いて、同定したmutationの有無による遺伝子発現への影響を検討する。さらに、統合失調症の合併した広汎性発達障害患者、大規模な統合失調症患者、広汎性発達障害患者、および健常者サンプルを用いて、mutationを含む遺伝子領域を調べ、合併例で見出した稀で効果の大きいmutationが、合併例特異的なものか、統合失調症全般にも共通して関連するmutationであるか等を検討する。また、広汎性発達障害のトリオで見出された変異遺伝子についても、同様に他のサンプルでの重複がないか否かを検証する。この為、平成25年度に引き続いて、疾患群だけでなく健常者群、患者群のリクルートを継続して行う。以上の様に、予定通りに研究計画を進める計画である。
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Research Products
(19 results)