2013 Fiscal Year Annual Research Report
YAP/TAZ活性化細胞の同定とそれを標的にした薬剤の開発
Publicly Offered Research
Project Area | Development of Novel Treatment Strategies Targeting Cancer Stem Cells |
Project/Area Number |
25130709
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
日笠 弘基 九州大学, 生体防御医学研究所, 助教 (40596839)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | Hippo経路 / YAP/TAZ阻害剤 / YAP/TAZ活性化シグナル |
Research Abstract |
癌抑制シグナル・Hippo経路の主な抑制標的である転写共役因子YAP/TAZは、癌幹細胞の自己複製に関わり、Hippo経路破綻による発癌に対して理想的な治療標的である。本研究では、内在性YAP/TAZの転写活性を定量化・視覚化できるレポーターシステムを利用して、YAP/TAZ阻害剤の開発、生体内でのYAP/TAZ活性化細胞の同定および、YAP/TAZを活性化する生体シグナルの解明を目指す。さらにHippo経路の新規経路を同定して、その全貌を明らかにし、Hippo経路破綻によって引き起こされる癌の治療戦略に貢献することを目的とする。 本年度は、レポーター遺伝子導入細胞を用いたハイスループット化合物スクリーニングにより、YAP/TAZ依存的ルシフェラーゼ活性を低下させる化合物を選別した。現在これらの化合物の中から、種々の細胞株において、YAP/TAZの標的遺伝子の発現を特異的に抑制できるものを選択中である。さらに、どのような刺激でHippo経路が破綻もしくはYAP/TAZが活性化されるかを検討するため、レポーター遺伝子導入細胞に種々の成長因子、シグナル阻害・活性剤等を添加培養し、YAP/TAZの転写活性を大幅に上昇させる因子を検索した。その結果、興味深いことに、複数のリボソームRNA合成阻害剤がYAP/TAZの転写活性を大幅に上昇させ、さらにYAP/TAZ内在性標的遺伝子も同様に大きく発現を増大させることを見いだした。これらの結果は、リボソーム機能の低下とYAP/TAZ活性化がリンクしている可能性を示唆しており、今後、リボソームや核小体の形成と、YAP/TAZの活性化および発癌への関連性を検討していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度はYAP/TAZ阻害剤の開発のためのハイスループット化合物スクリーニングの系を確立し、実行することで、YAP/TAZ依存的ルシフェラーゼ活性を強く減少させる化合物を複数同定できた。一方、Hippo経路遺伝子欠損による腫瘍形成において、YAP/TAZ活性が増進する細胞をin vivoで同定して解析することが本研究の主要な課題の1つであるが、その解析に必須であるYAP/TAZ特異的レポーター遺伝子トランスジェニックマウスの安定した系統樹立に至っておらず、今後の急務である。また、YAP/TAZ活性化シグナルの検索から、リボソームRNAの合成阻害がYAP/TAZの活性化を引き起こすという意外な知見が得られ、リボソーム病と総称されるリボソーム機能欠損疾患に特徴的な高頻度な発癌率のメカニズムを解明できる可能性が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
YAP/TAZ阻害剤スクリーニングにより選別された化合物の中から、内在性のYAP/TAZ標的遺伝子群を効率的に発現抑制できるものを選別する。そして、Hippo経路における作用点を解析するとともに、Hippo経路因子破綻マウスに投与することで抗癌効果を持つ化合物を特定することを目指す。 また、生体内におけるYAP/TAZ活性化細胞の同定・解析のために、YAP/TAZ特異的レポーター遺伝子トランスジェニックマウスの系統樹立を試みているが、まだ成功できていない。そこで、次のアプローチとして『生体内において、どのような刺激やシグナルがHippo経路を破綻させ、YAP/TAZを活性化させるのか』という疑問に対し、YAP/TAZを活性化させる因子のスクリーニングを実行し、その一環として、リボソームRNA合成阻害剤がYAP/TAZの転写活性を大幅に上昇させることを見出した。これらの結果は、ヒトやゼブラフィッシュの遺伝学的解析において、リボソームRNA前駆体のプロセッシングやリボソームの成熟に関わるリボソーム蛋白質の変異および欠損が発癌を促進させるという知見とも合致する。そこで、種々のリボソーム蛋白質の機能不全および、リボソームや核小体の形成阻害によるYAP/TAZの活性化機構を解析し、発癌との関連を解析する。 さらに、Hippo伝達経路を体系的に理解するため、 Hippo経路の主要因子であるNF2,MST, MOBに結合する蛋白質をマス解析により網羅的に検索して、同定された蛋白質の機能解析を行う。
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