2013 Fiscal Year Annual Research Report
DNA損傷部位で停止した転写装置が及ぼす複製フォークの進行阻害とその回復機構
Publicly Offered Research
Project Area | Coupling of replication, repair and transcription, and their common mechanism of chromatin remodeling |
Project/Area Number |
25131713
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
真木 寿治 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 教授 (20199649)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 染色体再編・維持 / 遺伝的不安定性 / 複製フォーク |
Research Abstract |
本研究の目的は、DNA損傷により停止した転写装置がDNA複製フォークの進行にどのような影響を与えるのかを分子レベルで解明し、転写装置により進行が阻害されたDNA複製がどのようにして回復するのかを明らかにすることである。そのために、申請者らが開発したin vitro oriCプラスミドDNA複製系での複製フォークの進行をモニターする実験系を基盤として、特定の部位にDNA損傷を導入した鋳型DNAを用いることにより損傷部位で停止した大腸菌RNAポリメラーゼによる複製フォークの進行阻害の状況を詳細に解析することを計画している。本研究では、バルキーアダクトDNA損傷としてベンツピレン付加体を用い、leading鎖およびlagging鎖に導入した鋳型DNAを調製することとしていた。 本年度は、in vitro oriCプラスミドDNA複製系に用いる特定の部位にベンツピレン付加体を導入した鋳型DNAの新規の調製法の確立と、それにより得られた鋳型DNAを用いた複製フォークの進行の阻害および回復の過程の解析を中心に研究を進め、これまでの成果を論文にまとめて学術誌に投稿した。しかし、ベンツピレン付加体の化学合成の収量が低いことと、それを含む鋳型DNAの調製の収量も低いために、多数回の実験を行うことが困難であることが判明し、損傷鋳型DNAの作成について別の種類の損傷を用いることが必要となった。また、in vitro oriCプラスミドDNA複製系での複製産物を詳細に検討した結果、複製を開始した分子の大部分が特定の長さまで伸長反応を進めた後で停止していることが明らかとなった。その後の解析から、これは複製フォークの進行に伴う正の超らせんの蓄積が原因であることが判明し、DNAジャイレースがそれ以降の複製フォークの進行に重要な働きを持つことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
試験管内DNA複製系での研究を進めるために必要な多数の複製タンパク質の精製は順調に進んでいることと、副生産物をサザンブロッティングにより詳細に解析する実験手法の開発に成功している。損傷鋳型DNAの調製については、本年度の研究で大きな問題点に直面したために、今後は新たなタイプのDNA損傷を用いた調製法を開発する必要が出てきた。RNAポリメラーゼがDNA複製フォークの進行に及ぼす影響の研究は世界で初めての取り組みであるので、かなりの困難があることは想定内であるので、少し回り道をしても当初の研究目的を達成したいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究より、oriCプラスミドDNAの試験管内複製においては、複製の進行に伴い鋳型環状DNAの超らせん状態が変化し、DNAジャイレースによる負の超らせんの導入が複製フォークの進行に大きな影響を及ぼすことが強く示唆される結果を得た。鋳型の超らせん状態はRNAポリメラーゼのプロモーター結合や転写反応の進行にも大きな影響を及ぼすことが考えられる。そこで、今後は、DNAジャイレースを含まない反応系で複製装置と鋳型DNAの複合体を形成させた後に、その複合体を分離する実験系の開発を試みる。タグを付加したTusタンパク質を用いて、ter配列を含むoriCプラスミドをアフィニティビーズで分離する計画である。この分離された複製中間体複合体を用いて、RNAポリメラーゼの転写開始頻度および複製と転写の相互作用を早急に解析する。同時に、損傷を含む鋳型DNAを用いた解析も進める。
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Research Products
(9 results)