2013 Fiscal Year Annual Research Report
XY型とZW型性決定システムにおける生殖腺性差構築機構の違い
Publicly Offered Research
Project Area | Molecular mechanisms for establishment of sex differences. |
Project/Area Number |
25132707
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
三浦 郁夫 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (10173973)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 生殖腺 / 性差 / ツチガエル / 性染色体 / 性決定機構 |
Research Abstract |
本研究では、ツチガエルのSox3遺伝子が卵巣および精巣決定を担う両刀使いの遺伝子であることを証明し、Sox3を中心とした性連鎖遺伝子の構造や他の遺伝子との発現ネットワークを比較して、XY型とZW型における生殖腺性差構築の遺伝的制御機構の違いの解明を目的とする。平成25年度は、以下の機能解析を行った。 ①ZW型におけるW-Sox3遺伝子の機能解析。1)W-Sox3とARについて同時機能解析。ARを導入したF0個体が産卵しなかったため、実施できなかった。2)Sox3のTALENノックアウトによる機能阻害。Sox3のTALEN RNAを導入した受精卵のうち、8個体が変態まで発生した。Sox3遺伝子のmutation率は、0%~80%であり、個体によって異なった。ZZの4個体は全て正常な精巣を有していたが、のこりZW4個体のうち、1個体は精巣らしき生殖腺を形成した。 ②XY型におけるY-Sox3(およびX-Sox3)遺伝子の機能解析。1)Y-Sox3遺伝子の機能誘導。Y-Sox3コンストラクトを受精卵に導入し、3個体のF0個体を得た。X-Sox3導入については個体がまだ小さいため、F0個体の同定を次年度の春に行う。2) MolpholinoによるSox3の機能阻害実験。処理後変態した個体について生殖腺の組織切片を作成して観察中である。一方、TALENによるSox3遺伝子ノックアウト実験では、10個体が変態を完了し、5個体のXY個体は正常な精巣を形成した。残り5個体のXXのうち、1個体において外部形態が精巣様の小さな生殖腺が形成された。 以上の結果から、ZW型とXY型においてSox3遺伝子は卵巣分化に関与していることが示唆された。なお、X,Y,Z,W染色体の塩基配列を次世代シーケンサーによって決定し、現在、得られた配列を解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ツチガエルのZW型とXY型について、Sox3が性決定を担うという仮説のもと、機能解析実験を計画した。本年度は、ZW型においてAR遺伝子とSox3遺伝子の同時機能解析はARのF0個体が産卵しなかったために実施できなかったが、W-Sox3遺伝子の機能阻害については、TALENノックアウトによってZW個体が精巣用構造を作るという結果を得た。これはW-Sox3遺伝子の卵巣決定機能を示唆する。一方、XY型におけるY-Sox3の機能誘導については、Y-Sox3遺伝子が導入されたF0個体を得ることができたので、次年度のF1作成による機能解析実験が可能である。また、TALENノックアウトによりXX個体の一匹が精巣用の生殖腺を形成したことから、XーSox3の卵巣決定機能が示唆された。Morpholinoによる機能阻害実験は結果を解析中である。一部実施できない実験もあったが、概ね計画通りに進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、TALENノックアウトで得られた個体を正常個体に交配することで、Sox3遺伝子の4つの対立遺伝子Z-,W-,Y-, X-Sox3にmutationを生じた個体を作製し、生殖腺の表現型を調べることでその機能を解析する。さらに、各ノックアウト個体をW-Sox3やY-Sox3を導入した個体と交配することで表現型がレスキューされるかどうかを調べる。また、それぞれのSox3遺伝子の発現様式について各対立遺伝子+GFPのコンストラクトを導入した個体で調べるとともに、Sox3のタンパク抗体により、組織切片で発現細胞を同定する。4つの性染色体の塩基配列について、結果を解析する。以上に基づき、XY型とZW型システムにおける生殖腺性差構築機構の違いを明らかにする。
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