2013 Fiscal Year Annual Research Report
抗原特異的T細胞受容体の迅速クローニング及び抗原タンパク質の同定法の開発
Publicly Offered Research
Project Area | HLA polymorphism, disease and evolution |
Project/Area Number |
25133703
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
岸 裕幸 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 准教授 (60186210)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | T細胞 / T細胞受容体 / 抗原 |
Research Abstract |
我々は、これまでに、HLA/ペプチド四量体を用いて、抗原特異的T細胞をフローサイトメータにて同定し、分取したT細胞より、単一細胞レベルにてT細胞受容体(TCR)遺伝子を取得するシステムを開発してきた。T細胞を分取してから、TCRを取得し、その抗原特異性を検証するまでを最短10日間で行うことができる(hTEC10システム)。しかし、この方法は、抗原ペプチドが同定されていないT細胞に対して応用することができない。そこで、本研究では、EBウイルスの抗原の一つであるBRLF-1を発現した抗原提示細胞を用いて、EBウイルスが潜伏感染している健常人の末梢血リンパ球を培養・刺激し、CD137分子の発現を指標に単一細胞ソートした。ソートしたT細胞のTCRのレパートリー解析を行った結果、BRLF-1特異的TCRが効率よく取得されることがわかった。この結果より、本システムを用いることにより、抗原が未知のがん等に特異的なTCRを取得できる可能性が示された。 さらに、我々は、T細胞の抗原を同定するシステムを構築した。すなわち、HLA-A2分子の細胞質側にTCRのシグナル伝達で重要な役割を果たすζ鎖の細胞質部分を結合させたキメラ分子の発現ベクターを作製し、TCR陰性のT細胞株に発現させた。さらに、我々は、HLA-A2に結合する様々なペプチドを発現する発現型ペプチドライブラリーを作製した。このライブラリーをレポーターT細胞に導入し、抗原特異的T細胞と共培養した。セルソータでソーティングを繰り返すことにより、CD137陽性細胞が選択されてくることが確認された。現在、これらの細胞中に抗原ペプチドを発現させるベクターが存在しているかを検証している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は大きく2つある。一つ目は、ウイルスが感染した細胞やがん細胞に特異的に反応するT細胞を同定し、そのTCRを効率よく取得するシステムの構築である。二つ目は、取得したTCRの抗原を同定するシステムの開発である。まず、一つ目については、抗原提示細胞に反応し、活性化されたT細胞を、細胞の増殖、サイトカインの産生、CD137等の活性化マーカーの発現等を指標に同定する計画を立てたが、CD137分子の発現が一番バックグランドが低く、簡便に同定できたので、CD137分子の発現を指標に、EBウイルスのBRLF-1抗原に反応するT細胞を同定することができるかを検討したところ、実際にBRLF-1抗原の特異的なTCRを取得することができた。従って、ほぼ計画通りに進行している。 次に、取得したTCRの抗原を同定するシステムの構築に関しては、まず、レポーター細胞を構築することができた。すなわち、HLA-A2分子にシグナル伝達分子であるζ鎖分子を結合させたキメラ分子を発現するレポーター細胞を構築し、抗原特異的T細胞との相互作用により活性化マーカーであるCD137分子が発現することを確認できた。現在、この細胞に、発現型ペプチドライブラリーを導入し、抗原特異的T細胞と共培養することで、CD137分子が陽性の細胞を選択できる可能性が示されており、実際に抗原ペプチドが導入された細胞が選択されているかを検証中である。従って、二つ目の計画もほぼ計画通りに進行していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26 年度は、抗原同定のシステムにて、抗原特異的なT細胞のTCRに特異的な抗原ペプチドが同定できるか、検証を進める。また、全体として、EB ウイルスで形質転換させたリンパ芽球様細胞株に反応する細胞を検出し、TCR のクローニングを行う。そのTCR の抗原ペプチドを、本研究にて開発した、抗原同定システムを用いて、同定できることを示す。
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