2013 Fiscal Year Annual Research Report
がん進行予測のための、がんゲノム進化シミュレーション
Publicly Offered Research
Project Area | Integrative Systems Understanding of Cancer for Advanced Diagnosis, Therapy and Prevention |
Project/Area Number |
25134701
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
木立 尚孝 東京大学, 新領域創成科学研究科, 准教授 (80415778)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | がん / ゲノム進化 / アルゴリズム / バイオインフォマティクス / 次世代シーケンサー / 合祖理論 / 機械学習 / 集団遺伝学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、数理生物学の分枝過程モデルと、集団遺伝学の合祖理論を融合し、がん細胞増殖と、がんゲノム進化との相関を記述する、がん進行シミュレーション手法を開発することを目的としている。この手法を用いて、がんゲノムデータから、過去のがん進行の歴史を推定し、未来方向へがんの進行予測を行うシステムを開発することをめざしている。 平成25年度は、1細胞シークエンス法により得られたがん細胞集団ゲノムに対し、集団遺伝学で用いられている合祖理論を適用して、マルコフ連鎖モンテカルロ方によりがん細胞集団サイズの時系列的変化を推定するプログラムの作成を行った。このソフトウェアにより、がん集団ゲノム進化のシミュレーションをテストしたところ、モデルのパラメータが複雑な依存関係を示し、生物学的解釈が非常に難しいことが判明した。このため、モデルパラメータの依存関係がより単純になる状況を考え、その状況に適切な新たながんゲノム進化の数理モデルを考案した。この数理モデルは、サンプリングではなく、勾配法に基づくパラメータの最尤推定ができるように設計した。 このモデルでは、がんゲノムの細胞系譜は既知であると仮定し、そのもとで、合祖確率を最大化する細胞分裂と細胞死の速度を最適化する。これを既存の一細胞シーケンシングデータに適用したところ、同一のがん組織内の3つの部分型が、それぞれ独自の細胞分裂と組織増殖の形態を持つことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
がんゲノムの進化モデル構築は、世界的に見ても始まったばかりであり、どのような数理的手法を用いるかは、未解明の部分が多い。その中で、合祖理論の確率モデルの最尤推定により、ミクロスコピックながん増殖パラメータを求めることができる本研究の手法は、計算の容易さと得られる情報のリッチさの面から非常にバランスのよいものであると言える。 また、この手法を一細胞シーケンシングデータに適用することにより推定された、がん細胞の増殖パターンは、がん組織の生存戦略が、同一組織でも部分型ごとに異なることを示しており、生物集団の数理生物学を用いた、がん研究の道を切り拓く研究成果ではないかと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点での問題は、一細胞シーケンシングによるがんゲノム解析が世界的にあまり進まず、足踏みをしている点である。そのため、本手法を適用できる公開データは、現時点では同一グループの2例に留まっており、汎用性のある手法にはなっていない。また、多倍体化したゲノムを十分にモデルに取り込めていない点も解決する必要がある。 このため、今後は、現時点で用いているモデルとは全く違ったアプローチで、がんの増殖過程をモデル化することを考えている。具体的には、合祖理論の代わりに、ライト・フィッシャーモデルの拡散方程式をがん集団パラメータの推定に用いることを行う予定である。
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Research Products
(2 results)