2013 Fiscal Year Annual Research Report
視覚的物体認識のための質感情報処理メカニズムの解明
Publicly Offered Research
Project Area | Integrative studies of neural mechanisms and advanced information technologies for perception of material and surface qualities |
Project/Area Number |
25135722
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
田村 弘 大阪大学, 生命機能研究科, 准教授 (80304038)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 物体認識 / 視覚 / 神経生理 / マルチニューロン計測 / マルチプローブ電極 / サル |
Research Abstract |
物体表面の色や肌理・模様などの視覚特徴は、物体認識の有効な手がかりとなる。本研究では、視覚的物体認識に重要であるサル腹側視覚経路を対象として、物体表面特徴情報の脳内表現様式とその脳内変換過程を明らかにすることを目指す。本年度は、物体表面特徴の認識の基礎となる神経回路の理解を目指した二つの成果を発表した。一つは、下側頭葉皮質における水平方向神経結合の様子を多プローブ多ニューロン同時計測法と相互相関解析法を組み合わせることで明らかにした(Tamura et al., J Neurophysiol, in press)。もう一つは、第一次視覚野における局所的な細胞配置構造と選択的応答の関係を、二光子顕微鏡を用いた神経活動イメージングより明らかにした(Ikezoe, Tamura et al., J Neurosci, 2013)。さらに、物体表面画像に対する選択的応答形成機構を検討するために、4種類の操作(無彩色化、ピクセルシャッフル、位相シャッフル、PS画像化)を施した物体表面画像に対する下側頭葉皮質細胞の応答を調べた。刺激画像の色を除いた無彩色画像に対しては、応答性細胞の割合と応答強度はともに低下した。すなわち、いくつかの細胞では、刺激画像の色が応答誘発に重要であることを示している。ピクセル単位でランダムにシャッフルした画像(輝度値や色成分は保存されている)、空間周波数・方位成分を維持した位相シャッフル画像に対して、多くの細胞で応答は消失した。局所的な構造を維持した画像(PS画像、Portilla & Simoncelli, 2000) に対しても、多くの細胞で応答は減弱したが、位相シャッフル画像と比較すると応答はある程度維持されていた。下側頭葉皮質細胞は物体表面画像に対する選択的応答を、画像の局所的構造とグローバルな構造を利用して形成していると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画に従って研究は進められた。特に物体表面画像を様々な方法によって変換した操作画像に対する応答解析から、物体表面画像に対する選択的応答形成機構の理解が深められた。この成果は、再投稿に向けて改稿中である。改稿過程において、PS画像に対する神経活動データを新たに計測・解析した。改稿原稿にはこの成果も取り入れている。この成果に加えて、視覚的物体認識の中枢である下側頭葉皮質における水平方向神経結合の様子を多プローブ多ニューロン同時計測法と相互相関解析法を組み合わせることで明らかにした(Tamura et al., J Neurophysiol. in press)。また、第一次視覚野における細胞配置と選択的応答の関係について、二光子励起顕微鏡を用いて明らかにすることに成功した(Ikezoe, Tamura et al., J Neurosci, 2013)。さらに、表面特徴情報と外形輪郭情報との単一神経細胞における統合過程の理解を目指した実験のための刺激画像の準備を開始した。
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Strategy for Future Research Activity |
第一に、下側頭葉皮質神経細胞の物体表面画像に対する選択的応答形成機構に関する成果について、再投稿を行う。追加での計測・解析を行いながら改稿し、再投稿を行う。第二に、物体表面画像及びその変換画像を用いた計測・解析を、V4野、V1野の神経細胞応答についても行う。下側頭葉皮質への主要な入力源であるこれら領野について解析を行うことで、腹側視覚経路における物体表面特徴情報の変換処理過程について、その全体像を明らかにすることを目指す。第三に、物体の視覚的認識に重要である物体表面特徴情報と物体外形輪郭情報の、下側頭葉皮質における情報表現様式についての研究を実施する。特に単一神経細胞においてこれらの情報が統合されているのかに注目して、その統合様式も含めて明らかにすることを目指す。実験のための刺激画像セットを完成させ、下側頭葉皮質から神経活動の計測を行い、得られたデータの解析を行う。これらの成果について取りまとめ、学会発表及び原著論文として投稿を行う。
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