2013 Fiscal Year Annual Research Report
スキンシップが惹起する情動の脳認知科学的メカニズム
Publicly Offered Research
Project Area | Integrative studies of neural mechanisms and advanced information technologies for perception of material and surface qualities |
Project/Area Number |
25135734
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
北田 亮 生理学研究所, 大脳皮質機能研究系, 助教 (50526027)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 触覚 / 視覚 / 素材 / 統合 / fMRI |
Research Abstract |
本研究の目的はスキンシップの重要性を念頭に「脳はどのように触覚で素材を理解して、情動を惹起するのか」について脳認知科学的に明らかにすることである。平成25年度の研究では、素材情報の視触覚比較には、長期記憶に関わる神経基盤が関与することを明らかにした。 我々の身の回りにある物体の多くは、素材に何らかのコーティングがなされており、見た目だけではどのような物質でできているのか分からないことが多い。このような場合、視覚から推測される質感と触覚から得られた質感情報を比較することで、その物体の構成をよく理解することができる。昨年までに22名を対象に実施したfMRI実験データを解析し、視触覚の素材統合過程に関する脳活動パターンを明らかにした。この実験では素材(石・繊維・木材・皮)の上に方位の異なる薄い棒を付着させた刺激を用いた。参加者は(1)視覚と触覚で呈示した刺激のうち素材の種類が同じであるかどうか(素材条件)、(2)視覚と触覚で呈示した刺激のうち棒の方位が同じであるかどうか(方位条件)を判断した。素材条件では方位条件に比べ、腹側視覚経路・海馬・外側前頭前野の賦活が観察された。素材条件のうち視触覚の刺激が不一致の場合は、一致した場合に比べて、楔前部が賦活した。これらの脳領域は、長期記憶の想起に関わる神経基盤として知られている。方位は空間参照フレームを通じて視覚と触覚で比較することができるが、素材は共通の情報が視触覚の間に少ない。そのため過去の視触覚の連合学習経験を頼りに、素材の一致・不一致を検討していると解釈した。この成果は論文としてまとめ、英文科学雑誌で査読中である。当初は記憶だけでなく情動に関する神経基盤が、素材の相違に関与することを予期していたが、賦活傾向が観察されるだけであった。この点に関しては更なる解析および追加実験により検討していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の研究により、素材情報の視触覚統合に関する新しい知見を提供することができた。しかし本研究の当初の目的は、「脳はどのように素材の弾性を理解して、情動を惹起するのか」について脳認知科学的に明らかにしようとするものである。この目的を達成するには、物理的な弾性を定義した刺激を作成し、経年劣化を考慮に入れるため、実験ごとに弾性を測定するシステムの構築を行う必要があり、これらの問題を解決するのに予想以上の時間を費やしている。そのため達成度はやや遅れているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き申請者は素材の弾性に関する実験系の確立と心理物理学実験の実施を目指す。本実験の実施がさらに遅れる場合を考慮し、2つの触覚による素材知覚の実験(ベルベッド錯触・他者との接触効果)を実施する。これらの実験結果から、触覚による素材知覚と情動処理に関する神経基盤を多面的に明らかにし、スキンシップに関する脳認知科学的モデルを提案する予定である。
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Research Products
(4 results)