2013 Fiscal Year Annual Research Report
実験・計算科学による内耳臓器内カリウムイオン循環の機能解析
Publicly Offered Research
Project Area | Establishment of Integrative Multi-level Systems Biology and its Applications |
Project/Area Number |
25136704
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
|
Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
任 書晃 新潟大学, 医歯学系, 助教 (80644905)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 聴覚生理学 / イオン輸送 / 内リンパ液電位 |
Research Abstract |
数理モデルによる外層基底側膜の輸送分子阻害時の表現型の予測 現行のモデル上で、外層基底側膜に設定しているK+取込み輸送体(Na+,K+-ATPase・NKCC)の活性を10%に低下させると、K+循環がこの場所で障害されることで外層内のK+濃度が減少し、頂上膜のK+拡散電位およびISの電位の低下を介して内リンパ液高電位も大きく減少する。加えて、K+取込み輸送体を様々な度合いで阻害した場合や、Na+,K+-ATPaseとNKCCの一方を阻害した場合などをモデルで検討した。しかし、外層基底側膜のNa+,K+-ATPaseとNKCCを含めた数理モデルでは、膜電位の変化が再現できず、再度電気生理実験へと立ち戻る計画へと変更した。 外層基底側膜に発現するK+輸送体の貢献の解明 申請者のグループは、in vivo実験系で薬物を用いた電気生理学的手法により、外層基底側膜に発現するNa+,K+-ATPaseの寄与について研究を行い、内リンパ液高電位とK+循環への寄与を明らかにした。具体的には、Na+,K+-ATPaseの阻害薬であるウアバインを投与し、外層基底側膜のK+濃度が低下することを確認できた。さらに、同部位におけるNKCCの貢献を電気生理学的に明らかにするべく、阻害薬による実験も実行した。その結果、外層基底側膜のK+濃度は、阻害薬の投与にもかかわず、低下を認めず、これまでK+循環や内リンパ電位に関係すると考えられて来たNKCCが、実際には殆ど寄与していないことが実験により明らかとなった。現在その成果を論文に纏め、科学雑誌への投稿を予定ている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
外層基底側膜のNa+,K+-ATPaseとNKCCを含めた数理モデルでは、膜電位の変化が再現を試みたが、再現できず、そのため、再度電気生理実験へと立ち戻る計画へと変更した。まず、in vivo実験系で薬物を用いた電気生理学的手法により、らせん靭帯に発現するNa+,K+-ATPaseの寄与について研究を行い、内リンパ液高電位とK+循環への寄与を明らかにした。さらに、NKCCの貢献を電気生理学的に明らかにするべく、阻害薬による実験を実行し、らせん靭帯におけるイオン濃度と電位変化が測定された。その成果はすでに日本生理学会、および日本薬理学会にて発表している。現在実験結果を基にした数理モデルの改訂に努めている。また実験結果単独で論文に纏め、科学雑誌への投稿を予定している。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでに構築した数理モデルでは、らせん靭帯の特性の詳細が解明されていなかったため、同部位における数理モデル化が簡略化されていた。そのため、らせん靭帯障害時のシミュレーションを行うことができなかった。今回の実験結果に依拠したらせん靭帯の数理モデルを構築し、これをK+循環モデル内に実装する。さらに、外層基底側膜ではなく、有毛細胞層での薬物投与により、電気生理実験によるデータの測定を行い、これらを統合した新規内耳数理モデルを構築する。
|
-
[Journal Article] The mechanism underlying maintenance of the endocochlear potential by the K+ transport system in fibrocytes of the inner ear2013
Author(s)
Naoko Adachi, Takamasa Yoshida, Fumiaki Nin, Genki Ogata, Soichiro Yamaguchi, Toshihiro Suzuki, Sizuo Komune, Yasuo Hisa, Hiroshi Hibino, Yoshihisa Kurachi
-
Journal Title
Journal of Physiology
Volume: 591
Pages: 4459,4472
DOI
Peer Reviewed
-
-