2013 Fiscal Year Annual Research Report
分岐理論に基づくヒト固有心筋自動能の発生機序並びに合理的制御法の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Establishment of Integrative Multi-level Systems Biology and its Applications |
Project/Area Number |
25136720
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | Kanazawa Medical University |
Principal Investigator |
倉田 康孝 金沢医科大学, 医学部, 准教授 (00267725)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | システム生理学 / 心電学 / 不整脈学 / 再生医療 |
Research Abstract |
本研究の目的は、ヒト固有心筋細胞モデルを用いた細胞~組織レベルでの数理生理学的解析により、1.早期後脱分極(EAD)発現・伝播の機序と合理的制御方法、2.ヒト固有心筋由来バイオペースメーカー開発・機能強化のための合理的イオンチャネル発現制御方法を明らかにすることである。 平成25年度は、まず我々のヒト心室筋細胞モデル(Kurata et al, Biophys J 83:2074-2101, 2005)及び近年公開されたモデル(O'Hara et al, PLOS Comput Biol, 2011;Carro et al, Phil Trans R Soc A, 2011)を用い、QT延長症候群(LQTS)症例の病態と臨床・実験データ(変異チャネルの電気生理学的特性)を基に、遅延整流カリウムチャネル電流(遅い活性化成分IKs又は速い活性化成分IKr)の抑制(LQT1,2)或いはナトリウムチャネル電流(INa)非不活性化成分の増大(LQT3)を設定して、EADを再現できるヒト心室筋LQT1-3モデル細胞を作成した。さらに、ヒト心室筋細胞モデルのパラメータ依存性分岐パターンを非線形力学系の分岐理論に従って解析するための分岐構造解析システムを構築した。ヒト心室筋細胞モデルのパラメータ(IKr, IKs及びL型カルシウムチャネル電流のコンダクタンス等)に依存した分岐構造を解析することにより、ヒト固有心筋におけるEAD発現の条件、力学的機序に関する以下の結論を得た:1.EADは脱分極領域のホップ(平衡点安定化)分岐点近傍で生じる。2.LQTSではシステムのEAD発現領域への近接化(又は領域拡大)によりEAD発現が促進される。3.EADの発現パラメータ領域はIKsのコンダクタンスに依存して拡大し、EADは「遅いIKsの活性化に伴って消失する一過性の周期軌道」と考えることができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の主な目標は、ヒト心房・心室筋細胞モデルのパラメータ依存性分岐パターンを非線形力学系の分岐理論に従って解析することにより、ヒト固有心筋における早期後脱分極(EAD)・バイオペースメーカー活性発現の条件、力学的機序及び制御方法を細胞レベルで明らかにすることであった。 研究実績の概要で述べたように、初年度には、遅延整流カリウムチャネル電流(遅い活性化成分IKs又は速い活性化成分IKr)の抑制、或いはナトリウムチャネル電流(INa)非不活性化成分の増大を設定することにより、EADを再現できるヒトQT延長症候群(LQTS)モデル心室筋細胞を作成することができた。さらに、ヒト心室筋細胞モデルのパラメータ依存性分岐パターンを非線形力学系の分岐理論に従って解析するための分岐構造解析システムを構築し、モデル細胞のパラメータ(IKr, IKs及びL型カルシウムチャネル電流のコンダクタンス等)に依存した分岐構造を解析することにより、ヒト固有心筋におけるEAD発現の条件と力学的機序を明らかにすることができた。このように、EADの解析に関しては概ね当初の計画通りに解析が進んでいる。バイオペースメーカー活性の解析に関しては現在進行中であり、当初の計画よりやや解析が遅れているが、分岐解析システムはほぼ完成しており、多細胞レベルでの解析の準備(モデルシステムの構築)も順調に進んでいるため、総合的には「概ね順調に進展している」と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、早期後脱分極(EAD)発生・伝播機構とその制御方法の解析を推し進めると共に、ヒト心室筋におけるバイオペースメーカー(BP)活性発現の力学的機序、BP細胞のロバスト性・心室筋ドライブ機能に対する自動能修飾イオンチャネル電流導入効果を究明していく予定である。モデルシステムの数値解析にかなりの時間を要するが、平成26年度には多細胞システムの解析を行う予定であるため、モデルシステムのスケール増大に伴って、解析に要する時間が大幅に拡大する可能性が高い。高速処理が可能なワークステーションをさらに1台補充すると共に、HPCシステムの構築・科学技術計算ソフトウェア(MATLAB)のバージョンアップなど、数値計算処理速度をさらに高速化して予定の解析を完了するための方策を講じる予定である。
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Research Products
(3 results)