2013 Fiscal Year Annual Research Report
Naイオン恒常性と浸透圧維持の多階層調節システム
Publicly Offered Research
Project Area | Establishment of Integrative Multi-level Systems Biology and its Applications |
Project/Area Number |
25136723
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | National Institute for Basic Biology |
Principal Investigator |
檜山 武史 基礎生物学研究所, 統合神経生物学研究部門, 助教 (90360338)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 神経科学 / 生理学 / 体液恒常性 / イオンチャネル / 脳神経疾患 |
Research Abstract |
ヒトを含む哺乳動物は、脳の感覚性脳室周囲器官において体液のNa+レベルや浸透圧を監視し、水分/塩分の経口摂取量の制御と腎臓における排泄/再吸収の制御を統合的に行っている。我々は、このシステムの全体像の解明を目指して分子レベルから個体レベルの各階層の研究を進めてきた。分子レベルでは、感覚性脳室周囲器官のNax チャンネルが体液Na+レベルセンサーであることを明らかにしてきたが、本年度、Naxチャンネルの活性化閾値が制御される仕組みを明らかにした。 Naxが真に脳のNa+濃度センサーであるとすれば生理的範囲のNa+濃度変化を感知できるはずであるが、Naxは体外(in vitro)ではNa+濃度が約150 mMを超えて初めて活性化するという特性を示していた。本研究において、Naxの活性化閾値は、体内では血圧調節ホルモンの1つエンドセリン-3 (ET-3)によって調節されており、生理的範囲のNa+濃度の上昇に応答できることが判った。 Naxは、体液Na+レベル上昇を感知して、塩分摂取を回避する行動の制御に関わっていることがわかっているが、逆に、塩分欠乏時に塩分摂取を促進する行動が制御される仕組みについては、詳細は不明なままである。これまでに、アンジオテンシンIIを脳室内に投与すると塩分及び水分の摂取行動が促進されることが知られている。我々はアンジオテンシンII受容体を発現する細胞の同定に成功した。また、Naxが体液Na+レベルの検出を行い、塩分摂取行動を制御するための中枢として機能していることがわかっている脳弓下器官のアンジオテンシンII発現細胞が投射する神経核の同定に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分子レベル、回路レベルの、各階層の解明は、当初の計画どおり順調に進んでいる。しかし、それらの成果に基づくモデル化が遅れ気味であるため、次年度に集中的に取り組む。
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Strategy for Future Research Activity |
1、塩分摂取行動の制御におけるアンジオテンシンIIの役割に関する解析:SFOにおいてアンジオテンシンII受容体 AT1aを発現する神経細胞がグルタミン酸作動性であることや、その中である神経核に投射する細胞が塩分摂取行動を担っていることが明らかになった。そこで、その神経核に投射するグルタミン酸作動性神経細胞に特異的に光活性化型チャンネル(ChR2)やポンプ(ArcT)を発現したマウスを作成し、光刺激による塩分摂取行動の制御を試みる。そのために、グルタミン酸受容体にCreリコンビナーゼを発現するvglut2-creマウスの分界上床核にChR2やArcT遺伝子をloxP配列で挟んだものを組み込んだ逆行性遺伝子輸送発現ウィルスベクターを導入し、光刺激時の塩分摂取行動を測定する。 2、マウス脳組織における神経活動制御の定量解析と新しい定量的生体システムモデルの構築:Nax を発現するグリア細胞とGABA ニューロンの共培養系を構築する。この系を用いてNa+イメージングと細胞外乳酸濃度測定、電気生理学的解析手法を組み合わせ、Nax 活性化と乳酸放出の関係、乳酸濃度と神経活動の関係を定量的に解析する。さらに、この測定値と文献値を入れた定量的生体システムモデルの構築を試みる。
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