2014 Fiscal Year Annual Research Report
タンザニアにおける「緑の革命」の実現可能性とその方策
Publicly Offered Research
Project Area | Studying Interactions between Politics and Economic Development in Emerging Countries |
Project/Area Number |
26101501
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
中野 優子 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (60648674)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 経済政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
人口の6-8割が農業に従事するアフリカの経済発展および貧困削減には、農業の発展が必要不可欠である。人口が増大し、一人当たりの可耕地面積が減少する中で、貧困削減を達成するには、穀物の土地生産性を高める必要がある。本研究はコメに焦点を当て、東アフリカ最大のコメ生産国であるタンザニアにおける土地節約型の稲作技術(近代品種、化学肥料、畦畔の設置、圃場の均平化、条植えの実施)の普及の決定要因と技術採用が稲作の生産性および収益に与える影響を明らかにすることを目的としている。 そのため平成26年度は下記の2つの研究テーマについて、代表者がこれまでに独自に収集した家計データの分析を行い、様々な政策介入が稲作技術の普及と生産性に与える影響についての学術論文を執筆した。 1)技術採用における共同体の役割:調査地では、国際協力機構(JICA)が2008年に稲作技術に関する農家研修を行った。本研究では研修で農家に伝えられた土地節約型の稲作技術がどのように普及していくのかについて、空間計量経済学の手法を用いて、農家間の地理的、社会的な紐帯に着目しつつ分析を行い、農家間の情報伝達および技術普及が機能しうるのかについて検証を行った。 2) 化学肥料補助金が施肥量と稲作の生産性に与える影響に関する分析:タンザニアにおいて実施された肥料補助金が、施肥量および稲作の生産性に与える影響を、補助金実施前後のパネルデータを用いて検証を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの研究の執行状況は概ね良好である。 研究テーマ1)に関しては、Valerien Pede研究員(国際稲研究所)、津坂卓志研究員(国際半乾燥地熱帯作物研究所)、會田剛史研究員(政策研究大学院大学)と共に論稿を執筆し、JICA研究所のワーキングペーパーとして発刊した(Nakano et al.2015)。また2014年7月にアメリカのミネアポリスで行われた農業応用経済学会の年次大会、2014年10月に東京大学で行われた科学研究費補助金新学術領域「新興国の政治と国家」プロジェクト研究会、2015年1月に政策研究大学院大学において行われた国際会議であるHayami Conference、2015年1月にJICA研究所で行われた「サブサハラ・アフリカにおける米生産拡大のための実証分析」研究会でも発表を行った。 研究テーマ2)に関しては、研究代表者が指導教員として指導しているIrumba Harold氏(筑波大学人文社会科学研究科修士課程)と共に分析を行い、同氏の修士論文として発刊した。また、2015年3月に行われた科学研究費補助金新学術領域「新興国の政治と国家」プロジェクト第9回全体会合において発表をおこなった。今後は国際査読誌への投稿を目指して推敲を行う予定である。 <参考文献> Nakano,Y., T.Tsusaka, T.Aida, and V.Pede. 2015 “The Impact of Training on Technology Adoption and Productivity of Rice Farming in Tanzania: Is Farmer-to-Farmer Extension Effective?”JICA-RI Working Paper, No.90.
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Strategy for Future Research Activity |
上記研究課題1)2)については、引き続き推敲し国際査読誌への投稿を行う。 また、研究課題3)として、技術採用が稲作の生産性と収益に与える影響に関する分析を進める。ただし、分析過程で同じデータを用いている研究課題2)と3)を統合して分析を行う可能性があるため、その場合は、1本の論文の内容を充実させることによって、より高いランクの国際学術誌に投稿することを目標とする。
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