2015 Fiscal Year Annual Research Report
新興国におけるインフォーマル制度の実験・行動経済学的分析
Publicly Offered Research
Project Area | Studying Interactions between Politics and Economic Development in Emerging Countries |
Project/Area Number |
26101502
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
澤田 康幸 東京大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (40322078)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | フィールド実験 / 農業経済 / 労働契約 / フィリピン / モラルハザード |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、フィリピン農村における田植え労働慣行に注目し「理論上は個人出来高制をとることで労働者の生産性を高められるはずなのに、なぜ全員一律の固定給になっているのか?」という問いに答えるべく研究を実施してきた。平成27年度は、二つの研究を実施した。第一に、前年度に引き続き、既に収集されたデータの解析をもとに、固定給の下では労働者の社会的選好とピアー効果の存在が機会主義的行動を抑制していることを発見した。こうした発見を取りまとめ、フィリピン農村の田植え労働契約を対象に経済的インセンティブと社会的規範および社会的選好の相互関係に関する論文を執筆し、アモイ大学で開催された国際会議を始め、様々な研究集会で研究結果を報告した。 第二には、2016年1月に、上記の研究を深めるため、特に、経済的動機付けと労働者間でのピアー効果をより厳密に把握することを目的として、フィリピン・Central Luzon State UniversityのThelma Estera教授の協力の下、ヌエバ・エシハ州の農村にて慎重に設計された新たなフィールド実験を実施した。この実験は、現地での田植え労働における契約形態の違いが生産性に与える影響をより厳密に検証するものである。また、各労働者の社会・経済的属性を把握するための簡単な質問票調査も併せて実施した。新しいデータを加味した解析結果を論文として取りまとめた。 本研究の目的は、途上国農村におけるインフォーマルな労働取引制度を対象に、農家の経済行動と村落コミュニティ内部の社会ネットワークとの間にある相互規定性を明らかにすることであった。こうした研究は、市場メカニズムの不備を補完するインフォーマル制度の成立要因を探るという点で、開発ミクロ経済学の根幹を支える重要な課題であるが、慎重に設計されたフィールド実験を元に、そうした課題に対する緻密なエビデンス(科学的証拠)を得ることができた。
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Research Progress Status |
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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