2014 Fiscal Year Annual Research Report
膜孔形成毒素の動的な作用機構の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Dynamical ordering of biomolecular systems for creation of integrated functions |
Project/Area Number |
26102501
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
田中 良和 北海道大学, 先端生命科学研究科(研究院), 准教授 (20374225)
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Project Period (FY) |
2014-06-27 – 2016-03-31
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Keywords | 蛋白質 / 微生物 / X線 |
Outline of Annual Research Achievements |
病原性微生物がホスト細胞に障害を与えるために産生する膜孔形成毒素は,可溶性の単量体として分泌されるが,ターゲット細胞に接すると膜上で2量体を形成し,それが円状に会合してプレポアと呼ばれる中間体を形成した後,劇的な構造変化を起こして膜孔を形成する.膜孔の形成により,ホスト細胞は死に至らしめられる.単量体と膜孔の結晶構造解析はこれまで広く行われてきたが,2量体やプレポア中間体は過渡的な不安定な状態であるため安定な分子として得ることが難しく,結晶構造は決定されていない.本提案では,黄色ブドウ球菌の膜孔形成毒素の2量体およびプレポア中間体の構造を,X線結晶構造解析,電子顕微鏡解析,小角X散乱,分光学的解析により詳細に解析し,膜孔形成の動的な会合機構を解明する. 平成26年度は,安定なプレポアを形成する事が生化学実験から明らかになっている変異体(WR変異体)の結晶構造を決定した.得られた構造は,膜孔構造と極めて類似した8量体を形成していたが,膜貫通領域だけが形成されていなかった.これにより,プレポア中間体の段階で,膜貫通領域以外の8量体構造がすでに完成しており,最終的に膜貫通領域が形成される事で,膜孔が完成するという分子機構が明らかになった.更に,白血球に対してのみ活性を示すLUKの構造解析にも成功した.LUKにおいても,上述のプレポアと同様の構造を保持していた事から,膜貫通領域のフレキシビリティーが変異導入によるものではないことが示された.更に,膜貫通領域を蛍光標識した変異体蛋白質の分光学的特性から,上述の分子機構が妥当である事を示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題の最重要点の一つがプレポア中間体の構造を捉えることであり,平成26年度内にそれが達成できたため,順調に進展していると評価した.
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は膜孔形成機構の初期段階についての知見を得るため,LukF,Hlg2の2量体の構造解析を行う.既に,2量体を形成する変異体の調製系は確立しており,今後,その結晶構造解析を行う.
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Research Products
(10 results)