2014 Fiscal Year Annual Research Report
コート小胞形成における動的秩序形成メカニズムの解明
Publicly Offered Research
Project Area | Dynamical ordering of biomolecular systems for creation of integrated functions |
Project/Area Number |
26102504
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
二井 勇人 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (90447459)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | COPII小胞 / リポソーム / 試験管内再構成 |
Outline of Annual Research Achievements |
COPII小胞の出芽機構を解明するため、リポソームと精製した酵母COPIIタンパク質(Sar1GTPase、Sec23/24複合体、Sec13/31複合体、Sec12)を用いて、試験管内でCOPII輸送小胞を再構成した。Sar1は、Sec12GEFによって活性化され膜上へ移行してコート形成の核となるが、コート内部のSec24GAPによって不活性化され膜から脱離する。コート崩壊の半減期は、Sec12GEF非存在下では約数秒と短い。COPII小胞の大きさは直径約60 nmであることから、様々な大きさのリポソームを調製し、①Sar1の活性を検出するトリプトファン蛍光、②コートの形成を検出する散乱光によって、膜の曲率がGAP活性とGEF活性におよぼす影響を解析した。直径約60 nmのリポソーム上では、直径約200nmのリポソームと比べて、GEF活性(kexchange)が2倍に促進し、これによりコートの崩壊が抑えられ、約2割のコートが崩壊せずに安定化されることが明らかとなった。安定化されたコート中のSar1含量は低く、Sar1の脱離後にSec23/24複合体とSec13/31複合体からなるケージ構造が維持されることが示唆された。以上の成果は、現在投稿準備中である。 また、アルツハイマー病の原因となるアミロイドβの輸送小胞内への積み込みについても解析した。ヒトのγセクレターゼとアミロイド前駆体を発現した酵母ミクロソームから再構成したCOPII小胞を用いて、アミロイドβ(Aβ)生成を解析した結果、輸送小胞内でAβ生成が促進することを明らかにした。さらに、プロテオリポソーム中でのAβ生成に及ぼす脂質の影響について、phosphatidylethanolamine plasmalogenによる阻害効果をあきらかにした(J. Biochem. 2014、J. Biol. Chem.投稿中)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
COPII小胞形成のメカニズムを解明する本研究の目的に向けて、試験管内再構成系を用いて膜の曲率とコート形成の関連を明らかにした。さらに、COPII小胞におけるAβ生成の促進効果と、Aβ生成に阻害効果を示す脂質を明らかにした。基礎生物学的知見から、認知症の治療に役立つ知見まで成果が得られており、幅広い視点から重要な研究となった。
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Strategy for Future Research Activity |
COPIIコートによる小胞形成機構の解析に向け、リポソーム・ジャイアントリポソームを用いた解析を進め、コート形成・維持・解離の各ステップにおけるSar1の制御メカニズムを明らかにする。また、膜タンパク質積み込み機構の解析については、SNAREなどの酵母のタンパク質に加えて、アルツハイマー病関連タンパク質(γセクレターゼ、アミロイド前駆体APP)の積み込みも解析し、小胞への積み込みとアミロイドβ生成の関連から、認知症治療に役立つ成果をあげることを目指す。
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