2014 Fiscal Year Annual Research Report
ペプチドフォールディングと超分子錯体によるハイブリッド動的秩序形成
Publicly Offered Research
Project Area | Dynamical ordering of biomolecular systems for creation of integrated functions |
Project/Area Number |
26102508
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
澤田 知久 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70625467)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 自己組織化 / 超分子 / カプセル / ペプチド |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、超分子化学によるものづくりと生命分子の科学の融合領域を開拓し、生命分子に潜在する動的秩序形成を解明するための人工系ー生命系のハイブリッド材料を創出することを目的としている。超分子錯体の合成技術をベースにして、生命分子であるオリゴペプチドに備わっている動的秩序形成を引き出し、新たなナノ材料の構築を目指している。具体的には、超分子錯体の足場を十分に活かして、ペプチドのフォールディングや会合を促し、ペプチド2次構造によって精密に囲まれたナノ空間の創出を目標としている。 本年度の研究では、まず、さまざまなパターンの動的な超分子錯体の合成を行った。三角形有機配位子(L)とパラジウムイオン(M)を水中で自己集合させることにより組み上がる自己集合性錯体において、三角形有機配位子の設計を工夫することで、三角錐ー四角錐や、六面体ー八面体の構造変換がおこる、ユニークな動的な超分子錯体の創出に成功した。 続いて、超分子錯体へのオリゴペプチドの導入に向けて、超分子錯体への官能基の導入を検討した。超分子錯体として、四面体型M8L4カプセル錯体を選択した。さまざまな種類の官能基を1カ所導入した三角形有機配位子を合成し、パラジウムイオンとの自己集合を検討した。その結果、メチルエステル基を導入した配位子を用いた場合に、定量的なカプセル錯体の形成が確認された。このとき、NMR測定によって官能基の向きの異なる4種類の立体異性体の動的なカプセル形成が確認された。 以上、さまざまな動的なカプセルの創出を達成した。また、カプセル錯体への官能基化も達成し、今後オリゴペプチドの導入を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、まず超分子錯体への自己組織化と、その超分子錯体へ結合させた生命分子(ペプチド)を活用したさらなる自己組織化、という2段階の自己組織化フェーズのあるものづくりを目標としている。これまでに、第一段階である超分子錯体の創出を達成しており、おおむね順調に進展していると考えられる。 本研究の目的達成のためには、まず、超分子錯体の創出が不可欠であり、これまでに構築したさまざまなタイプの動的な錯体(三角錐ー四角錐の構造変換を起こすものや六面体ー八面体の構造変換を起こすものなど)は、最適な足場となることが期待できる。また、四面体型のカプセル錯体に対して、4方向に官能基を導入することにも達成しており、生命分子であるペプチドを導入する段階に来ている。すなわち、2段階ある自己組織化フェーズのうち、最初の超分子錯体への自己組織化フェーズを実現することができたため、次のペプチドを活用した、さらなる自己組織化を検討できる段階といえる。 以上より、現在のところ本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
官能基を導入した、四面体型のカプセル錯体に対し、オリゴペプチドを導入する。オリゴペプチドの配列として、二重らせん構造をとりながら会合することで知られる、βヘリックスをとるものを検討する。そのようなペプチドを結合させた三角形有機配位子を合成し、水中でパラジウムイオンと自己集合させることで、ペプチドが4方向に配置された四面体型のカプセルを形成させる。続いて、この水溶液をゆっくりと濃縮することで、ペプチドの二重らせん会合を促しながら、結晶化させる。このようにして、四面体型のカプセル錯体から4方向へ伸びたペプチドによって無限に連結された、ネットワーク構造を創出する。カプセル錯体の自己組織化段階では、質量分析やNMR測定によって構造決定を行い、ネットワーク形成後には単結晶X線構造解析によって、精密な構造を明らかにする。ネットワーク化の際には、ペプチドの長さを調節することで、創出するナノ空間のサイズを制御する。さらに、創出した結晶性ネットワークの巨大な親水性ナノ空間へ、タンパク質をはじめとする、さまざまな生体高分子の包接を検討する。生体高分子の水溶液に対し、結晶性ネットワークの単結晶を浸すことで、生体高分子を拡散によって単結晶内のナノ空間へ包接させる。 以上の計画で研究を進め、超分子錯体と生命分子から成るハイブリッド材料の創出を実現する。
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