2014 Fiscal Year Annual Research Report
ヒトカルシトニンのアミロイド線維形成および阻害の分子機構の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Dynamical ordering of biomolecular systems for creation of integrated functions |
Project/Area Number |
26102514
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
内藤 晶 横浜国立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80172245)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ヒトカルシトニン / アミロイド線維形成 / 固体NMR / REDOR / 球状中間体 / βーシート構造 / 2段階自己触媒反応機構 / 線維形成阻害機構 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトカルシトニン (hCT) は甲状腺から分泌される32残基アミノ酸からなるペプチドホルモンである。骨芽細胞のカルシトニン受容体に結合して、カルシウムの代謝を抑制する作用をもっている。一方で容易にアミロイド線維を形成する性質をもっており、甲状腺髄様癌組織にhCTアミロイド線維が見つかっている。したがって、アミロイド線維形成構造や機構を研究することは、アミロイド病の予防や治療につながる観点からも重要である。加えて、線維形成を阻害する創薬の観点からも重要である。以上の観点を踏まえて、これまでに、hCTアミロイド線維の二次構造解析、立体構造解析、線維形成反応機構や線維中間体の存在について明らかにするため、次の研究を行ってきた。 1)アミロイド線維の立体構造を決定するため、[1-13C]Phe16, [15N]Phe19標識hCTの合成をペプチド合成機を用いて、合成した。2)固体NMRのREDOR法を用いて原子間距離情報を獲得し、中性、および酸性条件で形成するhCT線維の立体構造を解析した。3)分子動力学計算を行い、線維形成を安定にする分子間の相互作用、および相互作用を形成する残基の決定を行った。4)タンパク質の凝集阻害が知られているHEPES溶液中で形成される線維形成中間体の反応速度機構解析、および二次構造決定を行った。5)線維形成阻害が知られているポリフェノールクルクミンを添加して、hCTの線維形成反応機構を解析した。さらに、溶液状態のhCTとクルクミンの相互作用部位の特定を試みた。この結果からクルクミンの線維形成阻害機構について解析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに得られた成果を次に述べる。 1)、[1-3C]Phe16, [15N]Phe19標識hCT還元体の合成をペプチド合成機を用いて合成し、次に試料である酸化体の合成を達成した。2)申請者の研究室に設置されている固体NMR分光器を用い、13C, 15N標識ヒトカルシトニン標識部位の13C-15N原子間距離を、REDOR法を用いて測定し、測定データの解析を行った。この結果、中性溶液中で形成したhCT線維構造は逆平行βーシート構造であることが判明した。酸性条件で形成した線維構造は、現在の段階では平行βーシート構造と逆平行βーシート構造が共存する構造であることが予想された。3)こうして決定した立体構造をもとに分子動力学計算を行い、アミロイド線維形成に重要な役割を果たす線維形成能の高いアミノ酸残基の相互作用解析を行った。この結果、逆平行βーシート構造に対しては、Phe16-Lys19のπーカチオン、Ph19-Asp15のπーアニオン相互作用の寄与が重要であることが判明した。4)HEPES溶液中でhCTの線維形成反応速度を観測したところ、HEPESは核形成反応を阻害していることが、明らかになった。また、線維形成の過程で球状中間体の存在を電子顕微鏡により確認することに成功した。5)hCTにクルクミンを添加して、線維形成反応を解析した。この結果、クルクミンは線維の核形成反応速度を阻害することが判明した。溶液NMRを用いて、hCTとクルクミンの相互作用部位を観測したところ、Phe16, Phe19近傍でクルクミンと相互作用していることが明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策について次に述べる。 1)線維構造解析により、中性条件の線維は逆平行βーシート構造を、酸性条件の線維は平行βーシートと逆平行βーシートの混合線維構造を持つことが示された。この構造をより精密に決定するため、[1-13C]Asp15, [15N]Phe19-hCTを本研究中に合成し、固体NMRによる精密原子間距離測定を行う。2)HEPES溶液中で生成した球状中間体の二次構造を決定するため、[1-13C]Gly10, [3-13C]Ala22-hCTを本研究中に合成し、球状中間体を凍結した状態で、固体NMR測定を行い、中間体の二次構造決定を行う。さらに、[1-13C]Phe16, [15N]Phe19-hCT試料についても中間体を形成し、原子間距離測定を行い、精密立体構造決定に向けた研究を推進する。3)球状中間体の構造に対しても分子動力学計算を行い、中間体の構造を安定化しているhCTとHEPESの相互作用について解析する。4)クルクミンのhCTの線維形成阻害機構について、線維形成反応機構の解析をさらに推進する。これにより、クルクミンによるhCTの線維形成阻害機構の詳細を解析する。さらに、線維形成時のクルクミンとhCTの相互作用についても固体NMRによる解析を推進する。5)より生理条件に近い状態でのhCTの線維形成機構を解析する目的で、細胞膜の存在下における、線維形成機構についての研究を推進する。具体的には脂質二分子膜の存在下でのhCTの膜との相互作用解析および線維形成機構の解析を固体NMRおよび電子顕微鏡を用いて行う計画である。
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[Presentation] Detection of photo-intermediates of microbial sensory rhodopsin by in situ photo-irradiation solid-state NMR2014
Author(s)
A. Naito, Y. Makino, H. Yomoda, Y. Tomonaga, T. Hidaka, I. Kawamura, Y. Sudo, A. Wada, T. Okitsu, N. Kamo,
Organizer
16th ICRP
Place of Presentation
Nagahama, Japan
Year and Date
2014-10-05 – 2014-10-10
Invited
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[Presentation] NMR, QCM, MDシミュレーションによるk-オピオイド受容体細胞外第2ループとダイノルフィンの細胞膜中での相互作用解析2014
Author(s)
A. Naito, A. Kira, N. Javkhlantugs, T. Miyamori, Y. Sasaki, M. Eguchi, I. Kawamura, K. Ueda,
Organizer
第52回日本生物物理学会年会
Place of Presentation
札幌コンベンションセンター
Year and Date
2014-09-25 – 2014-09-27
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[Presentation] Detection of light activated intermediates of photoreceptor membrane proteins by in-situ photo-irradiatied solid-state NMR2014
Author(s)
A. Naito, Y. Makino, Y. Tomonaga, T. Hidaka, I. Kawamura, Y. Sudo, A. Wada, T. Okitsu, N. Kamo, A. Ramamoorthy
Organizer
16th ICMRBS
Place of Presentation
Dallas, Texas, USA
Year and Date
2014-08-24 – 2014-08-29
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