2014 Fiscal Year Annual Research Report
タンパク質物性から振動の理論生物学へ
Publicly Offered Research
Project Area | Dynamical ordering of biomolecular systems for creation of integrated functions |
Project/Area Number |
26102520
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
笹井 理生 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30178628)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | アロステリック転移 / 概日周期 / 1分子運動論 / 反応システム理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、タンパク質のアロステリック構造転移の転移経路と自由エネルギーランドスケ ープを計算する新しい方法を開発し、その成果をタンパク質間相互作用のシステム生物学と結びつけ、分子から細胞機能への融合分野を開拓することを目的としている。このため、26年度は以下の3つのテーマに取り組んだ。 その1つは、タンパク質のアロステリック構造転移の理論モデルの開発である。具体例としてヘモグロビンとAdKを取り上げて自由エネルギーランドスケープの分析を行い、ヘモグロビンの酸素結合の協同性、AdKのフォールディング転移など、実験との比較によってモデルの改良を行った。 2つめは、KaiABC系の1分子レベルでの理論モデルの構築である。とりわけ、タンパク質のアロステリック転移とATP加水分解反応、およびKaiCのリン酸化反応のカップリングに注目し、KaiC6量体1分子におけるATP加水分解反応とリン酸化反応が構造変化によっていかに制御されているか、またその逆に、構造変化がATP加水分解とリン酸化状態によっていかに制御されているかについて、簡単化されたモデルの範囲でパラメータを網羅的に探索することによる分析を行った。その結果、KaiCのC1ドメインにおけるATP加水分解反応速度の変化がC2ドメインにおけるリン酸化リズムの周期変化と相関する可能性を示唆する結果を得た。 3つめは、KaiABC系のシステムレベルでの理論モデルの構築である。実験で観測されたATP加水分解反応の速度論を説明する反応機構を分析して、理論モデル構築の手がかりとなるデータを得た。 27年度以降は、これらの3つのレベルの異なるモデルを統合して、マルチスケールの理論モデルを構築することを目標とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の目的である分子からシステムへ向かうマルチスケールの理論を構築するため、3つの階層の理論モデルの分析と改良を進めて、27年度研究の基盤となる成果を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
26年度の成果に立脚して、実験と整合的なマルチスケールの理論構築に向けて、研究を推進する。
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Research Products
(8 results)