2014 Fiscal Year Annual Research Report
アミロイド伝播核生成相におけるタンパク質分子の集合・秩序化メカニズムの解明
Publicly Offered Research
Project Area | Dynamical ordering of biomolecular systems for creation of integrated functions |
Project/Area Number |
26102531
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
茶谷 絵理 神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (00432493)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 蛋白質 / 生物物理 / ミスフォールディング / アミロイド / 核形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
アミロイド線維の核形成反応は、アミロイドーシスや神経変性疾患などアミロイド線維の沈着が関与する疾病群の発症に深く関与すると考えられている。しかしながら、詳細な分子機構は不明であるため、本研究では、伝播性をもつ核が形成する際にどのようなタンパク質分子の会合が進行し秩序構造を形成するのかについてのメカニズムを明らかにすることを目的としている。 H27年度は、インスリンについて、アミロイド線維の形成途中で過渡的に生成する線維前駆中間体についての捕捉および基礎物性の解析結果をまとめた。具体的には、FTIR、AFM、細胞毒性の解析を通して、線維前駆中間体の未熟な構造特性を明らかにした。さらに、プロテアーゼ消化を用いた遷移前駆中間体のクロスβ構造形成部位の解析を行ったところ、核形成に重要な構造形成部位の存在を提案することができた。 さらに、以上の結果をもとにインスリンと同様に中間体を捕捉観察できるか否かの検討に着手した。また、線維前駆中間体を経由したアミロイド線維形成反応経路について、小角X線溶液散乱法を用いて時分割観測し、前駆中間体が会合して成熟したアミロイド線維構造へと変化する様子を追跡した。同時に、連携研究者である神戸大学のルミアナツエンコヴァ教授の協力を得て近赤外分光法を用いた解析を実施し、インスリンアミロイド核形成反応の最中に特徴的な水由来のスペクトル変化が観察されることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
線維前駆中間体を経由したアミロイド線維形成反応の発見を足掛かりに、小角X線溶液散乱によりアミロイド線維形成に伴うタンパク質の集合の様子を時系列で追跡するという新たな研究へと発展させることができた。今後の解析により、アミロイド線維構造が形成されるまでのタンパク質分子の初期集合メカニズムに迫りたいと考えている。さらに、核形成相の最中に水構造が変化するという現象も見つかり、水分子の挙動の解析が線維形成機構を理解するうえで新たな切り口になる可能性を期待している。
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Strategy for Future Research Activity |
時分割小角X線溶液散乱測定により、前駆中間体が集合したのちさらに構造発達させる様子が明らかになりつつあるので、さらに検討を進め、論文発表を行いたいと考えている。さらに、インスリン由来の30アミノ酸残基から成るアミロイド性ペプチドについても反応条件によって比較的寿命の長い線維前駆中間体が観察できることを見つけたので、線維形成初期のタンパク質分子会合の様子を観測できる新たな題材として検討を進めることを計画している。さらにインスリンの核形成相の最中に見出された水構造の変化について、近赤外スペクトルの解析手法の検討や他の線維形成条件あるいはタンパク質での解析の実施を行うことでより詳細な解析を行い、核形成反応に対する水の貢献について検証を進める予定である。
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Research Products
(33 results)