2014 Fiscal Year Annual Research Report
量子シミュレーション手法の深化による超分子および生体分子の自己集合機構の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Dynamical ordering of biomolecular systems for creation of integrated functions |
Project/Area Number |
26102539
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
立川 仁典 横浜市立大学, 生命ナノシステム科学研究科, 教授 (00267410)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 量子シミュレーション / 溶媒効果 / 歯車状両親媒性分子 / 超分子自己集合 / 低障壁水素結合 / たんぱく質 |
Outline of Annual Research Achievements |
メタノール溶媒中のナノキューブ崩壊過程: 平岡らは、メチル基を持つ歯車状両親媒性分子(1)が、25%含水メタノール溶媒中で一義的に立方体(16)に自己集合することを見出した。一方でメチル基を全て水素原子に置き換えた分子2や、純粋なメタノール溶媒中での分子1や2は自己集合をしないことも見出した。本研究では自己集合が見られないメタノール溶媒中の26の立方体構造崩壊過程を分子動力学計算により追った。その結果、16は立方体構造を保持するが、26の立方体構造は崩壊することが分かった。崩壊過程を詳細に調べると、ナノカプセルはまずメタノール分子がピリジル基のスタッキングをほどき、そこに出来た隙間からメタノール分子が内部に入り込み、一分子解離して崩壊することが確認出来た。これは、26では16に比べてピリジル基の三重スタッキングが外れやすく、また水溶媒とは異なりメタノール溶媒ではナノカプセルに溶媒和するためである。 タンパク質中の低障壁水素結合に関する理論的解析: Photoactive Yellow Protein (PYP) は、中性子散乱の実験により、特にGlu46とp-coumaric acidの間では、OH結合距離が通常よりも大幅に伸長した低障壁水素結合を形成している。本研究では上記の水素結合の特性に関する知見を得るために、水素原子核の量子揺らぎを考慮できる手法として近年我々が開発したONIOM (MC_QM:MM)法を用いた量子化学計算を行った。その結果、核の量子揺らぎによって、実験で観測されたのと同様な結合伸長が起きることが実証された。また水素の化学シフトとH/D同位体シフトを計算して実験値と比較したところ、先に述べた大きな結合伸長を伴うモデルではなく、活性サイト周りの静電的環境が先とは異なる条件を仮定した、一般的な水素結合を有するモデルの計算値が実験値と最も良く一致することが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
プログラムの改良により、領域内での多くの共同研究を手掛けることができ、さらに具体的計算結果を得ることができた。またその成果をいくつかの査読付き論文として報告することもできたので、当初の計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今まで以上にプログラムを洗練させるとともに、共同研究を含め、さらなる応用計算を実施していきたい。
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Research Products
(27 results)