2014 Fiscal Year Annual Research Report
X線小角散乱と液中高速AFMの相補利用による分子時計の離合集散計測
Publicly Offered Research
Project Area | Dynamical ordering of biomolecular systems for creation of integrated functions |
Project/Area Number |
26102544
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
秋山 修志 分子科学研究所, 協奏分子システム研究センター, 教授 (50391842)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | タンパク質 / 小角散乱 / 概日時計 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では、Kaiタンパク質時計の離合集散過程を調べるため、X線溶液散乱と液中高速原子間力顕微鏡を用いる。X線溶液散乱では複数分子の信号の平均値を観察しており、一方、液中高速原子間力顕微鏡は条件が整えば1分子を解像する能力がある。これらの手法を相補的に駆使しつつ研究に取り組んだ。 小角散乱データを数日間にわたって安定的に取得することについてはノウハウの蓄積があったが(Akiyama et al., Molecular Cell, 2008)、広角散乱データについては新しい試みであるため条件検討から開始した。懸念されたとおり、一般的な実験方法では広角散乱データのベースラインを数日間にわたって安定に保つことが容易でないことが確認された。測定系については、ビームラインの担当者と綿密な連携をとって諸問題の解決に取り組んでいる。一方、試料についても対処が必要で、長期間にわたるインキュベーション等により試料の濃度や組成が僅かに変わってしまうなど、これらが信号に与える影響についても検討を行った。 液中高速原子間力顕微鏡については、基盤へのタンパク質分子の固定化に精力的に取り組んだ。タンパク質は粒子形状として観察されたり、中央部分に空孔を有するリング形状として観察されたりと、固定化する条件に応じて様々であることが確認された。条件を慎重に検証したところ、より安定的かつ選択的に固定化する方法が見つかった。塩の種類や濃度、またインキュベーション時間などを最適化することにより、リング形状がより明瞭に観察されるようになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
液中高速原子間力顕微鏡については、当初の計画よりも固定化条件の確定に随分と時間を費やしてしまったが、このような試行錯誤を経ることで、観察するための基盤的準備がほぼ整った。また、X線溶液散乱については広角領域のデータを数日間にわたって安定取得するための技術開発が必要と判明し、そちらに時間を要するため。
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Strategy for Future Research Activity |
液中高速原子間力顕微鏡については、固定化条件のスクリーニングにより基盤的準備が整いつつある。Kaiタンパク質時計の離散集合ダイナミクスがKaiCにより制御されているという仮説を検証するためにも、さらに空間分解能を向上させて、リング形状をより鮮明に観察する必要がある。X線溶液散乱については、測定試料の保持方法の改善、内部標準の利用、また試料の還流といった工夫を通じて広角領域の時間分解データ取得に取り組む。
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